出発から二日間で200キロを走り順調に思えた今回のベトナム自転車旅ですが、3日目になって雨にあたってしまいました。せっかくなので街を見て歩き、街路の木に鳥を探し、犬や猫を愛でつつダラダラとベトナムの地方都市で過ごしました。
11/8 雨のイェンバイ

朝8時。しっかり準備を整えてホテルのフロントまで降りると外は本降りの雨でした。一応雨具は持ってきているけど、雨の中の走行は危険なので今日は一日この辺をブラブラ観光して過ごすことにします。こういう一日があってもいいでしょう。

まずは大通りに出て朝ごはんを調達します。近くにバインミー屋があったので、適当に注文し近くのコーヒースタンドでブラックコーヒーをテイクアウトして一度ホテルに戻ります。
バインミーは要するにバゲットサンドでベトナム名物なんですが、これまで通過した街ではほとんど見かけませんでした。ある程度都会じゃないと売っていないのかもしれません。価格は20000ドン(117円)。どこで食べても具沢山で美味しいのですが、このイェンバイで食べたものは絶品でした。注文を受けてから調理をするので熱々です。

このバインミーは仕上にホットサンド機に挟んでつぶしてあるタイプです。ぺちゃんこになって見た目はちょっと悪くなりますが、こちらのほうがかぶりつきやすくて私は好きです。

部屋でバインミーをかじりながら日記を書きますが、湿気がすごくてノートにまともに書くことができません。Bのシャープペンをどんなに強く押し当てても薄い線しか引けないくらい紙が湿気を吸っている。見上げると案の定天井もカビている。そして今これを書きながら気が付いたがスポットライトが一つ飛び出している。
丸一日時間があるので、まとめて洗濯をしてから、ホテルのすぐ横にあるカフェでコーヒーを飲んでだらだら読書をしました。

ブラックコーヒーはカフェデンという名前です。何も言わないと砂糖を入れられるので砂糖抜きでと伝える必要があります。ブラックの概念が「無糖」ではなく「黒」なのです。
その場で抽出せずに、何かコーヒーの原液みたいなものに氷を入れて出てきます。そして、必ずバニラのフレーバーコーヒーなんですよね。日本で飲む”ブラックコーヒー”はおそらく外資系のホテルなんぞにいかないと飲めないかもしれません。
旅行前に入っておいたKindleアンリミテッドで本を読みます。歩き方とかロンプラも無料で読める場合があるので旅行の時だけ入るようにしています。もちろん機内で読むための小説や新書も限界までダウンロードしてあり暇つぶしはこれだけで事足りる。
スマホがあれば本当に何でもできるようになりました。本も読める、地図も見られる、決済もできる、翻訳もできる。もう私本体はいらないんじゃなかろうか。

猫は私にソファの特等席をとられて、いじけて戸口で外を見て過ごしています。いや別に、シェアしてもいいんだけど、警戒されて近くに寄ってきてくれません。なんなら膝に乗ってもらっても構わないのだが。

時々鳥が前庭の木に飛んでくるのでそれを撮影したりして、そんなに暇を感じません。こちらはシジュウカラですね。日本で見るものと同じ種だと思われます。せっかくベトナムに来たので珍しくて映える鳥を見たいんですが、こういう日本でおなじみの鳥を外国で見るのもなんだかいいものです。

こちらはメジロです。これも日本で見るものと全く同じ種でしょう。いるんですね。家のそばではあまり見かけないので久しぶりに見たのがベトナムとなりました。

そしてこちら、結構悩んだんですが見たことあるような気がしてしばらく考えた末にあたりを付けました。こいつはセンダイムシクイなんじゃなかろうか。写真ではわかりませんが,頭央線(頭頂部に白いラインがある)も確認できたので。
それでもムシクイの仲間は識別が難しいから間違っているかもしれません。もしセンムシだとしたら、冬に見るのはもちろん初めてで感慨深いです。もうちょっと調べてみます。
雨脚が弱まるとフラフラと散歩をし、強くなるとまたカフェに戻って読書、そんな感じで昼過ぎまで過ごしました。

ホテルそばのどぶ川で釣りをしているじいちゃんがいたので挨拶をして魚を見せてもらいました。ティラピアのような魚でした。こういう魚は白身で結構おいしいんですよね。でも、生活排水がそのまま流れ込んでいる川なので、長期的に見ると体を悪くするかもしれません。ちなみに引っかけ釣りの仕掛けでした。あくまで食用、実用の釣り。

昼は昨日のミーサオが美味しかったところに行きました。相変わらず客は私しかおらずちょっと心配になりますがコムラン(チャーハン)を注文しあっという間に平らげます。チャーハンのレベルも高いんだな、この国は。

自転車をこがずにダラダラしていても胃袋はスッカリ自転車旅モードになっているし、せっかくだから美味しい現地食を可能な限り食べたいので、頑張って散歩して鳥を見ておなかをすかせることにします。

近道の要所をふさがれました。多分いい奴なんだけどここを通ったら噛むからなという強い意志を感じるので、仕方なく遠回りをします。好きなタイプの犬なんで何なら仲良くなりたいんですが…首輪をしているし小ぎれいだからおそらく近所の飼い犬なんでしょう。こんな風に放し飼いで飼えるなら、犬も幸せだよなと思う。こういった南アジアのユルイ雰囲気は好きです。

気が付けば夜になっていました。旅行中とは思えない特に何もない一日でした。宿が安いからこそできる贅沢なのかもしれません。少し歩いたところにコムビンダンを見つけたので入ってみます。ランニングシャツの気さくなじいちゃんが店番をしています。若い食べ盛りの男性グループが次々にやってきて活気に満ちている。

ご飯はセルフのところと店員さんが盛るところがあります。店員さんが盛る場合おそらく性別と体格を見て盛る量を決めているのですが、お茶碗2杯分は盛られるので気合を入れて食べないといけません。このお店もおかずが充実しておりしばらく指をくわえて悩みました。低価格でおいしいものを腹いっぱい食べられる世界ってホント理想的だと思う。
ベトナムの米は思っていたよりモチモチしています。日本のお米と大差ありません。私が普段日本で食べているやっすい米よりもむしろ美味しいかもしれません。

このお店も店内が店主一家の生活の場となっており、ちょうど隣では家族の夕飯の時間です。街中でも感じるし統計的にもとても若い国なので小さな子、学生がたくさんいてそれだけでも勢いがあるよなーという印象。
夜、部屋でこの地方の天気予報を見ると数日雨マークが並んでいる。これは参った。別に急いでいるわけではないが雨が降ってしまうと貴重な旅先での一日が無駄になってしまう。
雨で遅れた旅程を取り戻す方法はないかと調べていると、イェンバイからニンビンへ行くバスがあることを発見。バス停はホテルから15キロ程度の場所なのでそこまで自転車で行き梱包し乗せることは簡単だろう。ということでバスを予約してから就寝。
11/9 雨のイェンバイ二日目

バスは午後4時なのでそれまでは昨日と同じように散策をしつつ過ごします。昨日よりは雨脚は弱まっており、ホテルで傘を借りて近所をぶらぶらしつつ鳥を探したり屋台や商店で買い物をしました。

ブンカーです。カーは魚です。もしかしたらあのおっちゃんが釣った魚の可能性がワンチャンあります。細かく刻んだ白身魚のフライが乗せられており、その油がさっぱりしているブンを少しコッテリさせ、絶妙なバランスに仕上げてきています。うめーなーと一人唸ります。

鳥を撮影していると足元がなんだか温かい。まだ子犬だけどこいつもしっかりとなわばりをアピールしていて触ろうとすると噛みつかん勢いだ。犬ってほったらかしにして育てたほうが自然と良い番犬に育つと思います。顔があどけなくてアドーラボーです。

路地裏に鳥が集まる木を見つけて、しばらくシャッターチャンスを待ってました。こちらはクリムゾンサンバードだと思われます。頭頂は鮮やかな水色です。主食はもちろん花の蜜。

こちらは後日撮影したメスなんですが、一転非常に地味なアースカラー仕上げとなっております。オスが派手なのは鳥界隈の常識です。

またもや場所をとられた猫は窓の外から私を見つめています。ソファ席をシェアしましょうと声を掛けましたが、お前と一緒にいるくらいなら一人で屋外で雨に打たれていたほうがマシだとのことです。どうか風邪を引かないでおくれ。

カフェデンばっか頼んでいましたが、せっかくなので違うコーヒーを注文してみました。小さなカフェやコーヒースタンドでもかなり多種のコーヒーやカフェラテ等を扱っています。スタバより多いと思う。みんな甘い系が好きらしく、キャラメルマキアート的なメニューが多い。
注文したのはカフェムオイというもので、ムオイは塩という意味です。クリームに塩を混ぜた甘いカフェオレでベトナムらしいコーヒーだと思います。塩によって甘さが強調され、甘いものが好きな人にとっては脳天に突き刺さりたまらないと思う。私もその一人。

お昼を過ぎたあたりで雨がいったん止み、まだバスには少し早いですがこのタイミングでバス停まで移動することにしました。いつでも出発できるようにパッキングはバッチリしてあります。二泊したトイレが臭いホテルともお別れです。二泊しても500,000ドン(約3000円)でお財布に非常に優しくて助かる。
念のため雨装備をしっかりして街のはずれにあるバス停へ向けて漕ぎ出しましたが、出発直後から本降りの雨に変わり、排水が悪い道路はあっという間にプール状になり、トレーラーが通過するたびに泥水をかぶります。
やっぱり雨の中のサイクリングは百害あって一利なし。だけどバスも予約したし今から引き返すのもどうか。頑張って1時間弱、途中道に迷いながらもバス停に到着します。

幸いちょうどいい東屋があったのでそこで汚れた顔を拭き、雑巾で自転車の泥を落として早速梱包していきます。どろどろだったから結構時間がかかった。そしてバスの到着を待ちますが一向にやってくる気配がない。そこでバスの発着を仕切っているおっちゃんに、ニンビン行きのFuta(バス会社名)のバスはいつ来るかと尋ねると、ここじゃなくて向こうのバス停だと言う。ほかのおっちゃんにも聞きましたが答えは同様。

どうやら場所を間違えていたみたいだ。そこまで遠い場所ではないがすでに出発時間を過ぎてしまっていたため、タクシーを呼んで市内のホテルまで戻ることにします。そのおっちゃんにタクシーを呼んでくれるかと頼むと、そこらへんにたむろしていたガラの悪い違うおっちゃんが自家用車でやってきます。
俗にいう白タクなんですが、雨も降っているしほかに大手タクシー会社の車も周囲には見当たらないので仕方なくその白タクのおっちゃんと交渉をし、言い値の200000ドンで手を打ちます。白タクはぼったくりはもちろん犯罪に巻き込まれる可能性もあるのであなたは利用しないでください。
さて、このおっちゃんの運転が恐ろしく荒く、四六時中クラクションを鳴らしながら、走行車線が右なのか左なのかわからなくなるような傍若無人な運転で、30分ほどでさっきチェックアウトしたホテルに舞い戻ったわけです。
フロントの青年に部屋はあるかと尋ねると、同じ値段でご用意できますとのことなのでもう一泊世話になることにしました。チェックインし濡れたものをすべて干してシャワーを浴びて一息つきます。いったい今日は何だったのだろうか。「なんて日だ」という言葉がまさにぴったり。
ただずぶぬれ泥まみれになり、バス会社にお金を支払いました。幸い2000円ちょっとと安いものなので痛くはありませんが気持ち的に落ち込みました。明日こそ確実に乗ってやるぞともう一度同じバスを予約してから夕食を食べに街へ出ます。

今までと違う方向に出かけコムビンダンを見つけたのでそこで食事をしました。35000ドンとここも安くて旨い。肉、野菜、揚げ豆腐、完璧な組み合わせです。すっかり真っ暗になった路地裏を歩いていると黄色い看板のビアホイを見つけました。
ベトナム版のビアガーデンなのですが、看板だけ残っていて廃業している場所が多く、これまで入る機会がありませんでした。客なのか店主なのかわからないおばちゃんに、ジョッキをあおるしぐさで尋ねると、とりあえず入って座れとのこと。

缶とドラフトどちらがいいかとそれぞれを指さしながらベトナム語で聞かれたので、まだ体験していないドラフトを注文します。このドラフトビールがビアホイと呼ばれているもので、それがそのままお店の通称となっているようです。
缶より少し薄めのビールで、一杯で顔が真っ赤になる私には程よい感じ。客は私以外いないので、多分気を使ってくれたのでしょう、おばちゃんは何やら嬉しそうにベトナム語で私に話しかけてくれますが、もちろん何を言っているかわからないので、グーグル翻訳を開いた私のスマホをおばちゃんへ向けて、しゃべるように促します。
あなたは日本人か。何歳か。結婚をしているか。などそんな基本的なことを聞かれつつ、私もあれこれおばちゃんに質問します。話を聞くと彼女は現在60歳で公務員を定年退職した後、このビアホイを始めたとのことです。
ビアホイは儲かるのか聞いてみると、これはいわばロマンでありビジネスではないとのこと。趣味で蕎麦屋をやっている上場企業を早期退職した日本のおっさんと似たような、採算度外視のロマン経営ということなのでしょう。いいですね。そして大抵、そういうガツガツしていない店のほうが商売的にもうまくいくものです。

ビアホイの定番おつまみ、ネムチュアを出していただきました。一度は食べてみたかったものです。発酵させたソーセージみたいなもので、何かの葉に包み、何かピクルス的なものをつけていただきます。思っていたよりもクセが無く、ほぼサラミでたしかにビールによく合います。

油断をしていたら勝手に2杯目を注がれてしまい、残すのも悔しいので気持ち悪くなることを覚悟の上それを飲みほし、会計をし、おばちゃんに別れを告げホテルに戻りました。もうフラフラです。60000ドン(350円)とビール二杯とおつまみと考えると非常に安価です。
さて明日こそニンビン行きのバスに乗ろう。部屋が変わっても相変わらずトイレが臭いホテルでそう決意し就寝したのでした。