私は己の人生を自分の手に取り戻したいと常々願っています。何から取り戻すのかというと「半額シール」からです。
半額シールが貼られたものを買うということは、自分で何を食べたいかを半額シール、いやシールを貼るおばちゃんに委ねているということになります。何を食べるか、それは人生において非常に重要な日々の選択の一つで、いわば生き方そのものということもできるでしょう。
今日こそ己を取り戻すぞ!という決意でスーパーに出かけ、食べたいものを食べてやろうとあれこれ物色するのですが、なぜか特に食べたいものが見当たらない。逡巡しているうちに、シールを貼るおばちゃんがシール発生器を乗せた台車とともにバックヤードから現れ、気がつけば半額シールが貼られた商品を手にしセルフレジでピッとしているのです。
食べたいものは”半額シールを貼られたもの”。これが私の現状でそこに己の選択は介在せず、ただただあの”赤黄ゴシック体の悪魔”に欲求が支配されています。唯一の救いは、それがお惣菜ではなく野菜や果物であるということです。いや、団子や大福も混ざるのですがコロッケやてんぷらといった総菜に手を出し始めたらもう後には戻れません。
そんなわけで、半額シールが貼られた川というものがあればぜひ入ってみたいなと思いつつ、今日もロッドを振りながら流れを探ってみます。
前回の続きから
前回の釣行、新規河川でよい思いをしたので、その続きから釣りを再開しました。まだしばらく釣りあがれそうな感じです。まだ見ぬ景色が広がっていると思うだけでオラワクワクスッゾです。
釣りに出かけるとき、今日こそは素晴らしい一日にしようと毎回思うのですが、それはなかなかに難しいことです。素晴らしい一日とは非常に抽象的な表現ではありますが、それは決して大物を釣るとか数を釣るとか、そういうことではありません。
私が考える素晴らしい一日とは、意識を常に”ここ”にとどめるということ。この表現が適切なのかわかりませんが、もっとかみ砕いていうのであれば”漫然釣行を避ける”ということです。
頭を使わずにぼーっとなんとなく、良い言い方をするなれば無我夢中で釣りをして気がついたら一日が終わっている、という釣りを避けたいのです。一投一投をなんとなく漫然とするのではなくて、指先竿先にまで神経を行きわたらせて狙うところに狙った軌道で毛ばりを落とす。そこで必ずしも魚が飛び出す必要はないのですが、思ったところで魚が出るのであればそれに越したことはありません。
そんな感じで一挙手一投足すべてに意識を傾け、一瞬一瞬を実感し慈しみ一日を終えるという”暮らしの手帖”のような”猫のしっぽカエルの手”のような釣行が、私が考える素晴らしい一日なのです。
が、実際はそんな優雅なことが可能なのは最初の一時間、イヤ30分がいいところなのです。身体とは本当に厄介なもので、汗をかき不快を感じ、蚊が耳元で嫌な音を立て、メマトイが目に飛び込みイライラし、魚を取り逃がし悶絶し、ササがカサカサいうだけでゾクッとして身をすくめる。こんな感じで我を忘れるのはあっという間なんだけど我を取り戻すには自宅に帰り熟睡し瞑想などまでする必要があるのです。
そういった身体的なイライラ要素が少ないと比較的長時間自分でいることができます。これからの秋のシーズンは虫も減るし暑さも和らぐのでそういう意味で大変良い季節ですし、都合がよいことに大物も出やすくなり、まさにここからの1か月半ほどは渓流の渓流による渓流のための季節といったところ。
さてそんな感じで、若干メマトイにイライラさせられながらも釣りあがっていきますが、気になることが一つある。それは先行者の足跡です。増水後、河原の土がぬかるんでいる状態だとそれに気がつくのは容易で、この日は大きい足跡と小さい足跡が寄り添うように上流へ向かって歩いていきます。
さてはカップルだな...
昨今ペアルックの男女のような軟弱な釣りびとを見かけるようになりましたが、渓流という場所はおんな子供が来るところじゃねぇなぞと、根が妬み気質にできている私は羨望とあきたりなさから北町貫多風の悪態をつきつつ、その足跡より先に行くことを急造の目標として魚釣棒をハタと握り直し遡上するのである。もうこの時点で”素晴らしい一日”は雲散霧消、どっか遠くに行ってしまっています。
途中、なんのことはない小さく浅い落ち込みから良型の山女魚が出て、それをロケットリリース(動画参照)後まったく同じ場所から今度は虹鱒が出ました。さすが虹鱒氏、節操がありません。明らかに釣られに来ている。
その後もポイントポイントでアタリはあるもののすぐにバレでしまうということが続き、手元に寄せることができたのは虹鱒一匹のみ。気がつくと先ほどのカップルの足跡も消え、なんだか森も鬱蒼とし空は暗く霧雨も降り出しヒグマっちも挨拶に出てきそうな雰囲気となってきたので、近くの斜面をイソイソ登り道路に出てトボトボと車まで引き返しました。
この川は二回目となりましたが、今回取り逃がした中に尺はゆうにある岩魚っぽい魚も混じっていたので予想通り面白い川のようです。次回も支流を含めてさらに探ってみたいと思っています。
画像と動画に思うこと
この記事でも画像(写真)と動画を使用していますが、あなたは記録を画像、動画どちらで保管しているだろうか。スマホがあるので、特に動画に関してはここ10年ほどで撮影のハードルは恐ろしく下がりましたね。
ほとんどの人が記録は思い出を保存するために撮影していると思いますが、思い出は事実でなくてもいいんじゃないかと、自分が撮った過去の動画や画像を見ていて感じました。
画像は思い出を引き出すトリガーとなり、その画像に関連した些細な事柄を映像や感覚として引き出してくれます。だから特定の決定的瞬間でなくても、たとえば集合写真や並んで撮った記念写真でも、その一枚があればその前後の出来事が想起されるのです。
それは俗に言う”思いで補正”がかかったものになるかもしれませんが、それで構わないのでしょう。そこに正確性は求められません。本人が今まで生きてきた記録を今を生きるための土台として使うことができればそれでいい。とことん美化し良いものに書き換え今を生きるための元気に変換できれば十分です。
翻って動画ですが、私にとっては冗長かつ想像の余地がなく、解像度が高すぎ、そのままの時間の流れと過剰な現実、そして音が記録されているので、個人的に使う思い出すためのトリガーという意味では、あまりにも情緒に欠けるんじゃないかと考えます。
実際に過去にいくつか動画を撮影しましたが、あまり見ることはありません。亡くした愛犬が実際に動いている動画もいくつかありますが、やはり画像ばかりをみて動画には手が伸びません。
だから年に数回は日常でも旅行先でもいいので大切な人や景色、モノなどと一緒に画像をのこしておくことは大切なんじゃないだろうか。今はスマホもあるし撮影の面倒さは皆無です。いつかこのブログの記録も将来の私が生きるための力となってくれればよいのですが、どうでしょうか。
マップの更改
おかげさまで渓流釣りマップ「空知」販売開始から一年が過ぎました。当初予想していたよりも反応があり感謝しています。
でも、「空知」と名をつけてしまった以上、空知の渓流を掲載すべきという考えが念頭にあり、それが自分の自由な釣行を縛っているなと感じたので、範囲を限定せずに釣行のすべてを記録できるマップに変更すべく、マップの名称を変更し範囲も拡大させました。
「道央」としておけば私の日帰り釣行のすべてをそのネタとして生かすことができるし、マップに釣行を縛られることもない。範囲を拡大した見返り(?)として大変恐縮ではございますが価格を若干値上げさせていただきました。
より具体的に言いますと、今回も出向いた鵡川方面の充実を期しています。おそらく釣り人、特に道外からいらっしゃる遠征の方は、道央西部の尻別川、余市川の情報が欲しいとお思いでしょうが、いかんせん自宅から距離がある上に人気河川でなかなかにスレているため、私は変わらず不人気で渓相はイマイチだけど魚影が濃い道央東部を開拓していくつもりです。
シーズン開始当初、実は空知に続き「胆振」というマップを作り、苫小牧、厚真、鵡川の情報を記載し販売しようと画策していましたが、一つのマップを作れるほどの情報を得ることは体力的に厳しく感じたので、今までの「空知」にすでにある胆振地区の情報を加えて「道央」とした次第です。
今後、余裕ができたら尻別余市も作れたらいいなと夢想しますが、シーズン中はあちら側に住む必要がありそうです。どこか小樽あたりに安く滞在できる場所があればいいのですが...情報があればぜひお願いいたします。
夕張で大物虹鱒を狙う
さて、話を当日の釣りに戻します。
先ほどの川からあがり車にもどった時点で13時。帰路は夕張をどのみち通過するのでホームリバーである2川で秋の大物虹鱒をさくっと狙ってみようと思います。
真夏はひどい有様でしたが、気温も下がり適当な量の雨も降ったので、コンディションはベストと言ってもいいくらい。水量も程よく水は澄んでいます。これだと私にも釣れてしまうでしょうガハハ。
太いハリスに切り替えランディングネットもすぐに出せる状態とし河原に悠然と立つ中年テンカラ師。
最初の川でまずは36の虹鱒をゲット。いいぞいいぞと一人徐々にテンションが上がっていきます。
動画でお分かりかと思いますが、あまりにも野暮ったい場所で出ました。実際の釣りはこんなもので、いかにもといった派手な落ち込みからはメザシのような小さな魚しか釣れないもんです。私はですが。
そして次の川の大物ポイント。ここではおそらく先行者があったのでしょう。小さな虹鱒しか手にすることができずにいい加減体力も限界に近づいたので切り上げることに。疲れからかひどく眠くて途中車を止めて仮眠をとってから、札幌方面へ車を走らせました。
釣行データ
天気と気温
- 晴れ時々曇り
- 現地最高気温25℃
タックル
- ロッド:DAIWA 清流X45
- ライン:レベルライン4号
- ハリス:ナイロン1.5号
- 毛ばり:#12ドライテンカラ毛ばり
釣った魚
- 山女魚4匹(最大22cm)
- 虹鱒6匹 (最大36cm)
確認した野鳥
- カワラヒワ
- アオジ
- ヒヨドリ
- ダイサギ
- アオサギ
- カワガラス
- キセキレイ
- コゲラ
- オオアカゲラ
- アカゲラ
- キジバト
- チゴハヤブサ
- トビ
画像はオオアカゲラです。その名の通りアカゲラよりもほんのちょっとですが大きく、背中の白い模様がアカゲラよりも不明瞭でぼやけているのが特徴です。頭頂の赤の入り方も違います。
そこまでレア種ではありません。決まった場所にいる印象で近所の雑木林や神社などでも見ることができます。
アカゲラの仲間にはコアカゲラという種もいて、そちらはかなりのレア種で狙って観察に出かけないと出会えない鳥でしょう。道東に多いらしいのでそのうち釣りがてら探しに行ってみたいものです。
河原ではまだキセキレイを観察できます。これが姿を消すと本格的に秋だなと感じ冬の訪れも実感しますが、まだ紅葉も始まっていないので季節は初秋にとどまっている印象。
さて、自宅近くのチゴハヤブサですが、幼鳥はすっかり親離れをしてエサをねだる声は聞こえなくなり、その代わり自分でトンボを追いかける姿や兄弟並んで飛ぶ姿を見かけるようになりました。不思議なことに5羽いた家族が2羽に減っていて、先にわたった個体もいるのだろうかと考えていますが、詳しくない私にはよくわかりません。
久しぶりにオオアカゲラも観察できたし、山女魚も出るとやはりブログ紙面が彩るというか虹鱒だらけとは雲泥の差があるものです。おそらく次回もこのエリアを中心に探ることになるでしょう。そろそろ尺上イワナを出したいところです。
本日もだらだら長い本文をお読みいただきありがとうございました。次回の釣行記もお読みいただけますと嬉しいです。