【2024/10/9】秋の道央渓流で三種釣り

数字で表されることを優先するか、主観を大切にするべきか、それに悩むことがたまにあります。部屋に温度計をつけるのは客観的事実を知りたいためで、なんか寒いなーと思って温度計を見たとき20℃だったのなら、それは部屋が寒いんじゃなくて自分の体が温まっていないということです。

でも自分が寒いと感じる主観を無視することはできません。数字が何を示していようが”寒いもんは寒い”。その体感は誰も否定できるものではありません。体温計、そして時計なども同様で、そこにはしばしば”体感”との乖離が生じます。

どちらを優先するのか、それは各々違うでしょう。一般的には男性は客観的事実を優先し女性は主観を優先させる傾向があると感じます。これは実体験でしばしばモメゴトの種となります。

でもほとんどの人はバランスよくそれらを時と場合に合わせて使い分けて日々の生活を送っているんだと思います。程度の差はあれど私もそうです。

今後そういった”体感”を数値化するテクノロジーがさらに開発されていくのでしょうか。温度とか重さだけではなく、痛みや辛さ楽しさなど諸々の感覚感情をも数値化し比較する時代が来るんじゃないだろうかと。

そうなったとき、社会は今よりも生きやすくなるのだろうか、それとも息苦しくなるのだろうか。そんなことを考えながら数値化されると誰もよりも高いと自負する”頭痛”と”不眠”を抱えつつ今日も釣り場へ向かうとしましょう。

コンテンツ

とりあえずの川で

とりあえず、自宅から近くてほかの川への起点ともなるエリアを流れる川を目指します。

今朝はとても冷え込み車内ディスプレイに表示される気温は8度。まさに体感通りで納得の数字です。そろそろ霜が降りるんじゃないかという朝晩の冷え込みを感じるようになりました。

この日、久しぶりに動画を撮ってみようと考え、片手にアタッチメント付きのスマホを握ったままテンカラを振ることにしました。本格的に動画をやっている人はGoProなど専門の機材をそろえるのでしょうが、そんな財力も心のスペースも投資を回収できる見込みも無い私は左手にスマホを握りしめながらの釣りです。

釣り系の YouTuber という人たちがいるみたいですが、私はその手の動画をほとんど見たことがありません。同じ釣りをしているだけに楽しみが減ってしまいそうで怖いというのもあるんだけど、よくよく考えると”リアルな人間が登場する動画”がなぜか苦手なんですよね。

生成された音声、もしくは声だけの動画に慣れすぎてしまったのでしょうか、過剰でなまなましい人間感が苦手になってしまいました。典型的なデジタル脳になりつつあります。

さて、動画を撮っていて気がついたのですが、実はテンカラは片手で可能な釣りの方法なんです。フライもルアーもリール操作(ラインの出し入れ)があるし、餌釣りもエサの付け替えがあるし手も汚れるのでなんだかんだ両手が必要です。

一方テンカラは、一度仕掛けを作ってしまえばあとは念仏を唱えながら利き手で竿を振り続けるだけとなり、私の場合はつねに左手が暇をしているわけで、こいつにスマホを持たせることぐらいはそんなに厄介なことではありません。ということにこの日気がつきました。意外といけるんじゃないか、と。

そして手に持っているので振動がダイレクトに伝わらずなかなかに良い動画を撮影することができるんですね。何事もやってみないとわからないものです。(動画参照ください)

そんな感じで動画を撮りながら1時間と制限を設け手ごろなポイントで釣りを始めます。最も釣れない朝マズメ後の時間帯ということで、さすがに厳しい状態。普段なら多くのアタリがあるポイントもシンと静まり返っています。

途中、住宅街に架かる橋を過ぎたところで大きめのアタリがありました。流れ込みの裏側と言ったらいいだろうか、流れが死んで淀んでいるところに毛ばりを落とすと数秒ののち水面のドライ毛ばりが水中に引き込まれ蛍光オレンジのラインがピンと張ります。

軽くアワセ魚をのせてあげるとなかなかにトルクがある引きでどんどん下流方向に引っ張られていきます。チラチラ見え隠れする魚の側面には鮮やかな朱のライン、あきらかに虹鱒といったその魚体は少しずつ浅瀬に寄せられ最後は私のネットにスルっと収まりました。

計測すると37cm。またも40に届かず些か残念に思いましたが、それでも朝一番の中型をバラすことなくランディングできたのでほっとしました。これであとは最悪何も釣れなくても、ぶつぶつ関係ない話を混ぜながらブログ記事は何とか仕上げることができるでしょう。

ここで今後の選択肢が二つあります。

  • 残り時間は大物狙いの本流一本に絞る
  • 小河川を探ったのち夕方本流へ移動

こういう時は直感に従うほかありません。この選択で大きく運命が変わると言っても過言ではなく、釣りはこの点本当に面白いからやめられません。もしあそこに行っていたら、もしここで釣りをしていなかったら、そんなことを考えるとその可能性の多さに圧倒されるもの。

平たく言うとただのギャンブルなんですが...

分岐となる交差点でぼーっと赤信号を見つめていたらお告げがございました。この後は小河川を一度探ったのちに夕方の短時間で本流の大物を狙う、そのような内容のものです。

激アツの滝つぼで

やってきた小河川、水量はやや少なめといったところ。今日は新規ポイントを開拓せずに入渓が楽で実績のあるポイントでサクッと釣果を手にしたいと目論み早速入渓します。

数日前にまとまった雨が降り、水に浸かりぬかるんだ砂には最近つけられたラジアルソールの足跡が続いています。ほかはいつものようにエゾシカの足跡があるだけで周囲は鳥の声もなく静まり返っています。

道路沿いにある断崖の好ポイントでは残念ながら小さい虹鱒が先に釣れてしまいあっけなく場が荒れてしまいました。こうなると山女魚や岩魚は遠慮して出づらくなってしまいます。

出る順としては、まず流れの中で繊細な山女魚を出し、対岸の岩の下からその様子を見ていた奥手の岩魚を出し、そして最後に落ち込みから鈍感力高めでパリピな虹鱒を出す、これが理想の順番。

と言ってもこの3種が同じポイントにいる川というのは限られていて、現在釣りをしているこの川はその可能性がある数少ない川なのです。

さて、いつもアタリはあるもののいまだに主だった釣果がない”激アツの滝つぼ”にやってまいりました。今日はどうでしょうか。

毛ばりを落とすたびにそれを触りに来る魚がいる。でもしっかりフッキングできないのでいつもよりラインのテンションを高めにして対応力重視のテンカラに切り替えましょう。

大きくあわせる操作をすると頭上の枝木に引っ掛けるので、腕をあげる程度のソリッドな合わせでとりあえず小さくてもいいから一匹ここから引き揚げたい。そんな思いで薄いアタリにソリッドアワセをすると、乗ってきたのはやたらに色が濃い中型の魚。

かなりサビの入った山女魚25cmです。ここまで婚姻色強めの山女魚は釣ったことがありません。ちょっと申し訳ない気持ちになりました。

さて、釣った後もアタリはあるのでついつい毛ばりを落とし続けてしまいました。次に釣れてきたのはなんと虹鱒。これは意外でした。それも川の規模から考えると悪くないサイズと言えます。次に出てくるのは岩魚なんじゃないかと、予定の時間を超過してひたすら滝つぼに毛ばりを落とし続けます。

そして次に上がってきたのは岩魚、ではなくまたまた激サビの山女魚24cm。まさかここで繁殖行為をしているんじゃ、そんな気もしてきたのでそそくさとリリースをしてその場を立ち去りました。そりゃ釣りに来たので渓魚を釣りたいのだが、自然繁殖の邪魔をしてまで釣りたいとも思いません。

その後少し釣りあがり、小さな山女魚と虹鱒をそれぞれ追加してこの川での釣りには満足をしたので予定通り某本流へ移動することにしました。今のところ順調です。いいぞいいぞ。

岩魚の本流

やってきた本流の上流域は水量水温ともに好条件がそろっていて、これはワンチャンあるんじゃないかとウキウキしながら河原に降り立ちます。

アクセスが良好なので釣り人も頻繁に見かける場所なんですが、そこはやはり本流ということでそう簡単には魚の姿を見ることはできないのです。

そんな渋めの本流で珍しく若い釣りびとを見かけました。大学生くらいだろうか。二人の軽装の男子が並んで釣りあがっていきます。装備は見るからにシンプルで食料はもちろん飲料も持っていないだろう”ロッド一本”というスタイルで、羆撃退スプレーなんかは間違いなくもっていないでしょう。

普通の学生さんにとって渓流釣りはやや贅沢かもしれません。ロッドやウェーダーなど不可欠な装備だけでも安くて5万はするだろうし、良いものを揃えようとすれば10万なんてあっという間に超過します。

そして車も必須なのでやはり手軽にできるアソビではないですね。私も学生時分は激安ロッドとリール、数個のスプーンをリュックに入れママチャリを漕いでアメマス釣りに行ったものです。

今の若い人はもっと手軽にアクセス出来て面白いものがネット上にたくさんあるので、わざわざヒドイ思いをする渓流まで出かける必要はないかもしれない。

ネットやゲームは本当に暇つぶしの質を変えました。そしてどんどんリアルに近づいていこうとしています。

いささか話がそれますが、私はVR、仮想空間は確かに技術的には面白いことだとおもうんだけど、そこに将来性を感じていません。

だって突き詰めれば仮想現実は仮想の現実なわけで、現実には及びません。この世の面白さは結局どこまでいっても実想現実、リアルなことにあるしょう。

スクリーンに写る画像や動画は”ネット上のコンテンツ”という前提があって楽しんだり私たちの生活を便利にするものであって、ネット世界で寝起きし飲み食いするわけではありませんし。

私は詳しくありませんが、ブロックチェーンの技術を応用して仮想空間内の物事に価値をつけ、それを投資の対象とするビジネスを考える人たちもいるようですが、さすがにそれは無理があるんじゃなかろうか。リアルを目指した結果行きつくのはやはりリアル、要するに現実世界でしょう。

釣りゲームの楽しさと実際の釣りの楽しさはまったくの別物だと思います。どちらが上とかいう話ではありません。ゲームにはその楽しさがあるし、リアルを突き詰めたい人は早々にモニターからはなれ実際の川に赴きメマトイやアブに囲まれてひどい目にあい、それでも何とか”執念の一匹”を手にして帰宅しうまい酒を飲みます。

テクノロジーが勝手に目指す仮想現実というものはどこまで行っても現実の劣化版にしかならないでしょう。たぶん将来性を感じて投資をしている人は、仮想現実という名の一つの新しい分野に魅力を感じているだけであって。

さて、そんなことを若い釣りびとみて思いつつ私も釣りを始めます。個人的感想ですが、フィールドに凛々しく立つ若い人を見るのは嬉しいことです。ふだん河原はおっさんまみれだから。

本流は難しく闇雲に探ると時間と体力を奪われるので、狙いを目に見える障害物に限定し、流れやその中にある見えない障害物は徹底的に無視をして釣っていきます。

確実に魚がついているポイントで何も反応がないといったことが続いたので、これを時刻のせいにしてしばらく河原で時間をつぶすことにします。いうなれば岩魚との待ち合わせの時間を間違えたカタチ。

そして1時間、付近を散歩したり空を見上げたり、ハナクソを指で丸め弾いたりしたのち、再び同じ場所へ順番に毛ばりを落としていきます。

流れの中に横たわる倒木の上にちょこんと毛ばりを落とし、ラインを水面に付けて半ば引っ張るように毛ばりを水面へと落とします。いかにも足を滑らせて落ちちゃいましたーという昆虫を演じるのです。

数秒後、ギラッと白い帯のようなものが水面下で光り、ロッドが瞬間重たくなりましたがすぐにフッと軽くなる。もう一度出てくれないかと同じような操作で毛ばりを投入すると、今度はまるで痕跡を残さず、ラインの張りだけでそのアタリを伝え、それを感知した私は思い切ってアワセ動作を行います。

あまりにも引かないしこりゃウグイかもと思いながら、ただただ手前に引きずられてくる魚を見るとちょっと怒り気味の岩魚です。明らかに顔がムッとしている。

その勢いのまま、無駄な泳ぎをさせずに一気に手元まで寄せてしまいました。計測41cm。怒っていたので撮影の時間をいただけず直行直帰されました。

今季初の40オーバーの岩魚で嬉しいには嬉しいのですが、ちょっと引っ掛かることがある。それは最初に水面下で光った魚体の方が明らかに大きかったということ。(典型的な釣り人あるあるですが...)

欲深い私はどうしてもそれを確認したくて、日暮れが早い深い谷でギリギリまで粘りましたが、その一匹はついに姿を現さないまま終了時刻となりました。

ありゃ50あったな、と胸の前で腕を広げてその魚体を無駄に勘定するのでありました。

それでも目的の本流岩魚を手にすることができたので釣果的には申し分ありません。むしろ次回へのモチベーションを与えてくれたあの”光る君”に感謝しなければいけませんね。

釣行データ

上空ではオジロワシ2羽がモツレカラマリ落下していました。見つめあっているのか睨みあっているのか、遊んでいたのか喧嘩をしていたのか、はたまた愛情表現なのかはよくわかりませんが、その後その2羽は何事もなかったかのように別々の方向へ向けて飛び去っていきました。

うーん、何をしていたのだろうか。

そして河原ではとうとうキセキレイを見かけることがなくなり夏鳥は南へ向け移動を始めたようです。動画撮影をしていたこともありそこまで真剣に野鳥を見ることができませんでしたが、相変わらずどこに行ってもカワガラスがビビビとまっすぐに飛んでいました。

この日午後、石破総理が衆議院を解散したニュースをNHKラジオ第一は終始伝え、それを聞きながらハンドルを握り釣りの支度をし装備を解きました。2年前、安倍元総理が銃撃されたそのとき、私は浜益川で”汗まみれのボウズ”を経験していました、

私と政治との接点はそれぐらいしかありません。まぁ、そんなものでしょう。たぶん私も泉谷しげるに怒られるのでしょうね。会う機会がないことを願います。

河原に足を運ぶたびに社会から一歩また一歩と離れていくような感覚に陥ります。求めても求められてもいない人間の居場所が渓流にはあるのでしょうか。

天気と気温

  • 晴れ時々くもり
  • 現地最高気温18℃

タックル

  • ロッド:DAIWA 清流X45 / DAIWA NEOテンカラ36
  • ライン:レベルライン3.5号
  • ハリス:ナイロン1.5号
  • 毛ばり:#12ドライテンカラ毛ばり

釣った魚

  • 岩魚1匹(最大41cm)
  • 虹鱒5匹(最大37cm)
  • 山女魚3匹(25,24、22cm)

確認した野鳥

  • アオサギ
  • ダイサギ
  • マガモ
  • トビ
  • カワガラス
  • キジバト
  • カワラヒワ
  • ムクドリ
  • ハシボソガラス
  • アオジ(鳴)
  • オジロワシ
  • ノスリ
  • アカゲラ(鳴)
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