新千歳空港から快速エアポートに乗って札幌方面へ向かう旅行者が、車窓を眺めることもなくただスマホに目を落としている様子を目にすると地元民としてやりきれない気持ちになります。
空港がある千歳から札幌への道中にも北海道らしい景色があちこちに見られるし、自転車で走らなければ出会えないものもあります。ということでこの記事では千歳の隣町である恵庭市から札幌の中心部まで続いているサイクリングロードをご紹介します。
起点のサイン
札幌恵庭自転車道という名称ですが、まだ恵庭までの全線が開通しているわけではなく、北広島の市街地手前に唐突にその入り口のサインが現れます。江別恵庭線と呼ばれている46号線です。
新たに恵庭方向へ延伸工事をしている様子もないのでおそらくこのまま放置なんだろうと思います。本当は新千歳空港から札幌市内まで自転車道を走れると最高なんだけど、それは現実的ではないでしょう。古くなっているところもあるから、現状あるものの維持で精一杯なのだと想像します。
雪で半年弱使用できなくなる事情を考えると、整備にお金を使えないのはある意味納得なのですが、せめて恵庭の道の駅までつなげてほしいなとも思います。
北広島市郊外
北広島市街地手前の畑。奥に見えるのはホクリョウの卵を生産している養鶏場です。昔ほど臭いはしなくなっています。
小麦でしょうか、金と緑のコントラストがきれいでした。しばらくはこういった景色のなかをゆったり進んでいきます。
少し南を流れる島松川の近くでヒグマの目撃が去年だったか報告されているのでちょっとドキドキしますが、まぁ大丈夫でしょう。この区間は人が全くいないので余計なことを考えて心配になってしまいます。
北広島駅までの一般道
この案内図を見てもわかるように、起点~北広島駅区間は謎に遠回りをするルートとなっています。くねくね曲がりながら畑や林の中を通過して、そして一般道を3キロほど走行することになります。
北広島駅までの一般道の区間にも案内板はところどころにあるので迷うことはないでしょう。詳しくはページ最初のマップを参照してください。
ぶっちゃけ46号線をそのまま進んだほうが効率的です。4車線道路で路肩も広く走りやすいので全線走破を目指していない人は迷わず46号線を走りましょう。
路面状況
ルート上にはこのように落ち葉や枯れ木が散乱しているところが多くあります。雨の後などは滑って危険ですし、一部老朽化で凹凸がひどい個所もあるのでそんなにスピードは出さないほうが賢明です。
札幌市内はコンクリートタイルの区間があったり、排水溝の段差が強めのところもあったりとまた違う意味で路面状況が良いとは言えないのですが、それでもノンストップで車を気にすることなく進めるのは魅力的です。
自転車通行可の北広島駅
北広島駅のこの広い駅舎はおそらく25年ほど前に建てられたもので、当時はもちろん球場ができることなど誰も考えていなかったでしょうが、結果的にこのような乗降規模に見合わない広いコンコースを作っておいたおかげで球場へ向かう多くの人を捌くことができています。
東西の出入り口にスロープがあり自転車も乗り入れることが可能(降りて押す)で、想定されたルート通りに恵庭方面から走って来た場合は駅のなかを通って線路を渡り、エルフィンロードと呼ばれている自転車歩行者専用道へ乗り入れます。
ここから球場までの区間はファイターズの試合開催日には大勢の人が歩いているので十分気をつけましょう。向かって左が自転車、右が歩行者と白線で分けられているし警備の人もいるので走れないということはありません。
エスコンフィールド
北広島駅から5分ほど漕ぐとエスコンフィールドが見えてきます。自転車だとあっという間です。
もう建ってしまったのでどうでもいいことですが、私は球場建設反対派だったのでこの三角屋根を見るといつも複雑な気分になります。
ここはまるっと一山削り取って開発されました。どこで聞いたか忘れましたがその森ではオオタカが営巣をしていたようです。何十年いや何百年かけて形作られた森と小さな流れ、ささやかな生態系が人間の一時の娯楽のために蹂躙されたというのが事実です。
野球を観戦するひとはそれを忘れないでほしいと思います。
林間コース
球場を過ぎると札幌市内の住宅街に入るまではしばらく林間を走ります。この日は最高気温30度という残暑厳しい一日でしたが、林の中は涼しくアカゲラ、シジュウカラ、ヒヨドリなど野鳥がさえずり、そしてエゾリスが走り去る様子なども見ることができました。
ところどころ遊歩道も整備されているので、自転車からおりてしばし散策することもできます。沿線にはトイレ、水飲み場がある公園がたくさんあるので休憩場所に困ることはないでしょう。
上野幌の高架橋
上野幌駅はちょうど札幌と北広島の間に位置していて谷になっています。ほぼ平坦な全ルート中で唯一若干上り下りがあるのでママチャリだといい汗かきそうです。
ここら辺まではJR線と並走しています。下を走るのは国道274号線です。この道をまっすぐ行けば帯広方面まで行くことができるという北海道らしいスケールの国道ですが、つい先日この付近で175キロで走行しオービスに引っ掛かっかた人がいたとニュースで見ました。動機は「急いで家に帰りたかった」とのことで、ぐうの音も出ません。
一般道との立体交差
札幌市厚別区の住宅地に入ると、このように自転車道は一般道の下をくぐる形で進んでいきます。ごく一部信号になっている場所を除いてほとんどがこのように立体交差になっているので途切れることなく快適にサイクリングを楽しめます。
使用するのはサイクリング目的の人たちだけではありません。地元の人が散歩をしたり買い物に使ったり、また一部は小中学生の通学路になっているところもあるのでスピードの出しすぎには十分注意してください。
この日は平日でしたがそれでもたくさんの人と行き交いました。休日はおそらくもっと込み合うのでしょう。
地下鉄大谷地駅
大谷地のバスターミナル付近です。この先に北星学園大学があり、ちょうど通学時間と地下鉄の到着時間に重なると大量の大学生が道をふさいでまともに走行することができなくなります。
自転車歩行者共用の道なので仕方ありません。スピードを落としてぶつからないように進みましょう。
北星学園大学を過ぎると厚別川に架かる虹の橋という楕円形のきれいなつり橋を走行しますが、この日は工事中のため入ることができませんでした(2024年9月上旬まで)。ちなみにこのあたりの厚別川にはウグイしかいないはずです。上流へ行けば小さいけどヤマメが釣れます。
アサヒビール工場
白石の手前でアサヒビールの工場内を走行する区間があります。大量に積まれたビールケースや工場設備を間近に見ることができます。スーパードライ派は必見です。
このロゴは長いこと変わりませんね。工場見学やお土産を買うこともできるみたいなので時間がある人は立ち寄ってみてください。なお自転車の場合、工場見学後の試飲は自粛しましょう。
東札幌のビル群
終点の東札幌が近くなってくると、大型マンションが林立するエリアを走行します。東札幌や苗穂と言えば札幌の下町で、町工場や倉庫が多かった地区ではありますが、今はどちらも再開発が進んで住宅と商業の街になりました。桑園と同じ現象です。
歴史が浅い札幌で唯一といっていいほど時間の流れを感じられる場所だったので、無機質な再開発は少し残念です。それでもまだまだ白石や美園あたりはちょっと猥雑な雰囲気が残っています。
南郷通に行き当たる
ラソラという商業施設の前で南郷通という大きな通りにぶつかり、ここは迂回しないとその先1キロほど続く自転車道へ渡ることができません。なので事実上の終点と言ってもよいでしょう。
すぐ左にはローソンもあるので一息つけます。北広島駅を出てからここまでサイクリングロード沿線にコンビニはありません。気を付けてください。
札幌コンベンションセンター
この自転車道の終点は札幌コンベンションセンター裏の公園の一角にあるのですが、車止め以外に何もないのでよほどの物好きでない限りそこまで行く必要はないでしょう。
先ほどの南郷通を左折し札幌中心部へ、そしてその先の小樽方面へ漕ぐのもまたお勧めです。
この施設はその名の通り大きな会議場で、ときに国際的な会議や学会が開かれたり商品の展示会が催されたりといつも活気のある場所です。
まとめ:静かに安全にサイクリングができる道
北広島駅からは終点の札幌コンベンションセンターまでは約20キロ。私は北広島市在住なのでしばしばこの往復40キロを体力づくりのために漕いでいます。
やはり車を気にしなくてもよいのは大きなアドバンテージで、しかも北広島駅を出てからはほぼ最短距離で東札幌まで行けるので何気に普段買い物の際にも利用しています。
途中の新札幌、そして終点から少し先には札幌ファクトリーという複合商業施設もあり、今回紹介しませんでしたが一歩自転車道から出ると便利な施設やおいしい飲食店がわんさかあります。
地元の人はもちろん、旅行で訪れた人にもぜひ走ってもらいたいサイクリングロードです。北広島駅前などではレンタルサイクルのサービスもあるので機会があればぜひ利用してみてください。