2023年秋に決行した台湾自転車縦走で印象的だったことを画像とともに振り返っていきます。前編の今回は、台北到着から苑裡までの行程です。
ルートや予算など、台湾縦走に関する詳細はこちらのページもご覧ください。



DAY1 : 桃園国際空港→淡水→最北端→淡水 2023/11/03

新千歳空港を飛び立ったLCCスクートの大型機は、日本観光を済ませた大量のアジア各国の人たちを乗せ、台北の桃園国際空港に23時ころ無事着陸しました。この飛行機は台北を経由し、シンガポールのチャンギ国際空港へ向かいます。
この時間から街に出てホテルにチェックインしてもなんだか割に合わない気がして、空港のベンチで夜が明けるのを待つことにします。一泊代浮いたのでその分おいしいものをたくさん食べてやろう。

MRTの始発まで6時間くらい待たなければいけません。少しくらい寝られるかと自分に期待していたのですが、案の定これから始まる初の海外自転車旅への緊張と興奮で一睡もできず、台北市街へ向かうMRTが動き始めた5時半に荷物をカートに乗せ長く過ごした固いベンチを後にしました。
MRTへの連絡通路は途中からカートの使用ができなくなるので、自転車を背負い寝不足でだるい体を引きずりながらなんとか自動券売機で切符を買い(コイン型のトークンだが)、とりあえず台北方面の電車に乗りこみ涼しい車内で一息つきました。
なぜ空港から直接漕ぎ出さないかというと、それがほぼ不可能だからです。おそらく世界各国の首都にある国際空港のほとんどは、現在では徒歩や自転車で出入りできないのではと思います。桃園空港もどうやらそうらしいので、一つ台北寄りの駅でMRTを降り、そこで自転車を組み立てて走り出そうと考えていました。

が、どうやら間違えて快速に乗ってしまったらしく、最初にとまった駅(長庚醫院という駅)で降りて、駅員さんに追加料金を支払い改札を抜け、駅前のスペースで自転車を組み立てました。
30分ほどで特に問題なく組み立てることができて、目的地である淡水という街までのルートをスマホで確認します。早速漕ぎ出しましたが、とても交通量が多く、ものすごいスピードで車がすれすれを走り去っていくので、すっかりビビッてしまい、しばらくは歩道をゆっくり走行しました。まぁそのうち慣れるだろう。

途中の露店で肉まんを買い公園の東屋で食べ、八里というエリアまで斜度9度という急斜面のうねった道を下り、淡水河という川の河口に到着。対岸に見えるのが淡水の市街地で今晩宿泊するホステルがあります。この時点で結構暑くて、公衆便所で半そで短パン姿になり、水分補給をしてベンチでしばし休息。
グーグルマップを見ると対岸まで渡し舟的なものがあるように書かれていたので、それを期待して桟橋まで行ってみたのですが、どうやら潮の満ち具合で運行を決めているらしく、水位が下がっている今は運行している気配がない。
結局しばらく下流にある橋までせっせと自転車をこぎ、淡水河を渡り、淡水市街まで整備された自転車道を進みます。この時点で長庚醫院駅を出発してから30キロ。

とりあえず今夜宿泊予定のホステルに荷物を預けて身軽になってしまおうと宿を訪れると、ちょうどオーナーさんが出迎えてくれて荷物を預かっていただくことができ、周辺の市場でパンと飲み物を買い、最北端へ向かって漕ぎ出しました。
淡水の街から最北端の富貴角灯台までは片道約20キロ、海岸線なのでアップダウンのある道が続きます。これを書きながら振り返ると今回の縦走で最も起伏にとんだルートだっと言えるでしょう。
灯台へ至る道は遊歩道になっており車両は侵入禁止ですが自転車はそのまま入ることができます。木道をカタコト言わせながら歩行者に注意しつつ進むと目的地が見えてきました。

この旅の起点となるランドマークにふさわしく、威風堂々と太平洋の風に打たれて佇んでいました。
なお、灯台へ至る遊歩道は西と東があり、西は急な階段になっているので特に自転車の場合は東側から入ったほうがいいでしょう。
さて、最北端からの旅を正式に始めることができたので、さっさと宿に戻ることにします。昨夜はほとんど寝ておらず暑さにもやられて相当消耗しました。コーラをがぶ飲みしながら無心でペダルをこぎます。

途中の街でビーチサンダルを買い、この旅初めてのローカル食堂に入り、よくわからず頼んだどんぶり飯をあっという間に平らげ、自分が何を頼んだのかもわからず言われるがままに支払いをし、海岸線を走る自転車専用道を満喫しながら夕方の淡水の街へ戻ってきました。

日が落ちると淡水旧市街の裏路地には怪しい雰囲気が漂い始め、汗と魚介と香水が合わさったようなムっとする臭いが充満していました。昼間は肉や魚、野菜を売る露天商がひしめき合っており、アジアの市場の熱気を感じることができます。
宿のオーナーさんと少しお話をし、屋上のランドリーの使い方などを教えてもらい、シャワーを浴び洗濯をし、早々に6人部屋の下段ベットに潜り込み、耳栓をつけて就寝しました。宿はこちらのホステル(旅行邦尼青年旅店 Tourist Bunny Hostel)にしました。

就寝時、私ともう一人しかいない様子でしたが、朝起きてみると6つのベットはすべて埋まっており、半数が欧米系のお兄さんやおじさんでした。皆さんびっくりするくらい静かで、敏感な私でも全然気が付かなかった。
初日は台湾の交通量と勢いに圧倒されながらも、特段トラブルなく目的地である最北端で旅のスタートを切り、おいしいものも食べ、南国らしい景色の中気持ちよいサイクリングとなりました。
DAY2 : 淡水→台北市内→台北駅→新竹 11/04

早くに目が覚め、昨夜に洗濯物を干しておいた屋上に上がると、夜は全く見えなかった景色に驚きました。アジアに旅行に来たんだなと少し感慨深くなりました。気候はカラッとしていて、ムシムシするような不快な暑さではありません。
この日はお昼頃に台北駅から電車輪行をするので、それまでは台北市内をぐるぐる周ってみようという算段で、とりあえず淡水河沿いのサイクリングロードを故宮博物院方面に向かって漕ぎ出しました。途中までは昨日通ったルートとなります。

淡水河沿いにずーっと自転車専用道が整備されており、台北中心部まで続いているので、非常に便利かつ高速移動が可能です。Youバイクというレンタル自転車に乗っている人、ジャイアントのロードに乗っている人などいろいろな属性の人がそれぞれのスタイルで休日を楽しんでいるように見えます。非常にのどかです。

しばらく高架下の日陰を快適に走行し、途中で鳥を見つけたり、社交ダンスをするおばさまなんぞを眺めたりしながらゆっくり漕いで故宮博物院の前まで来ましたが、美術工芸にめっぽう疎い私は外観だけ見て満足をし、早々に台北の中心部へ向かいます。

せっかくなので台湾総統府にも立ち寄ってみました。日本統治時代に総督府として建てられた建物は現在でも台湾政治の中心です。デザインは公募され、これが日本初のコンペと言われており、建築当時中央塔は台北で一番高く、台湾最初のエレベータが設置されたのもこの総統府らしい。

総統府裏のうらぶれた露店街でおいしい海鮮焼きそばを胃袋に流し込み、近くの台北植物園に行ってみましたが自転車では入ることができず、予定より少し早いけど台北駅に向かいました。
台北駅は駅っぽくない、なにか劇場のような外観で、1階は広大な吹き抜けのスペースとなっていてたくさんの人が地べたに座って時間をつぶしていました。結構な数の浮浪者や博徒のようなガラの悪い連中がいて、昔の台湾のカオス感を少しだけ感じることができました。

ホームはすべて地下に敷設されているらしく、なかなかに不思議な駅で早速迷子になりそうだったので、インフォメーションで「普通列車で新竹まで行きたいのだが」と聞くと、日本語担当のおばちゃんが登場し、切符の購入からホームまでの案内をすべてやっていただき、自転車を背負っているということで障碍者用のエレベータで地下二階まで丁寧に送っていただきました。疲れていたから正直とても助かりました。ありがとうございます。

さて、ホームでしばし電車を待ちます。日本で輪行する場合は先頭か最後尾の車両を狙って乗るようにしているのですが、ここではさっぱりわかりません。とりあえず新竹と書かれている普通電車が到着するまで待ち、日曜で込み合う車内へ。

桃園を過ぎるまではとても混んでいて地元の人の邪魔になっているという自覚もあり申し訳ない気持ちでしばらく棒立ちしていましたが、都市部を過ぎると車内も空き始め、車窓にはのどかな田園風景が広がります。森は深くジャングルのようでサギなどが舞っているのが見えます。

1時間半ほどで新竹駅に到着。駅前で自転車を組み立てて昨夜ネットで予約した駅裏のホステルに向かいます。玄関は無人で電話番号とラインのIDがホワイトボードに書かれているのみ。
空港でSIMを購入しラインは使える状態だったのでかかれている ID を登録し「予約していてついたんだけど」と英語で送ると、玄関の郵便受けに500TWDを入れろ、そしてそれを動画撮影してこのラインで送れ、とのことです。麻薬取引のようではあります。
ちょうど500TWD札が無かったので、大きな札を入れたらお釣りをもらえるか聞いたところ、とにかく早く動画を送れというので、1000TWD札を郵便受けに投入する模様を動画撮影しラインで送信すると、なんで1000入れているんだと理不尽に怒られ、いやいや、だから事前に聞いたでしょとチョットイラっとしました。

とにかく支払ったことは証明されたので、玄関ロックの解除番号を教えてもらいやっと一息つきます。シャワーを浴び荷物の整理を済ませて街へ散歩に出かけました。
新竹の駅はライトアップされており、この駅舎も実は日本統治時代の日本人建築家による設計とのこと。台湾島に現存する最古の駅舎だそうです。思っていた以上に古いものを大切にする人たちなんだな。

新竹の駅前通りには飲食店、雑貨屋、甘味屋などがたくさんあり、その中から自助餐というビュッフェスタイルの食堂で適当にお惣菜を皿に盛り、最後にご飯を頼み、スープも付いてバランスの良い夕食に。

まだ腹に余裕があるし、できるだけ現地のおいしいものを食べたいので、菓子店でシュークリーム的なものを夜食用に購入し、ホステルに向かって歩いていると、おいしそうな食堂が高架下にあり、やたらと現地の人で活気づいています。

見様見真似、指差しで注文すると何やらとんかつ定食のようなものが運ばれてきました。排骨飯と呼ばれているものらしく、これがまた絶妙においしく、あっという間に平らげてしまいましたが、周囲の人はテーブルに置かれているソースやらトッピングを駆使して非常に美味しそうなものに仕上げていて、なんだか悔しい思いをしました。そりゃそうだよな、地元の人がもっともおいしい食べ方を知っていて当然なんだ。
食後、食堂でしばらくぼーっとしていると、例の宿のオーナーからラインが入り、近くの店までお釣りを受け取りに来いというので、ちょっと遠回りをしお釣りの500TWDを受け取ってから暗い路地を歩いて宿までもどりました。
二段ベッドの下段に体を投げ入れカーテンを閉めプライベートスペースを作り、明日の行程を確認し、宿の予約も済ませ早々に就寝しました。どうやら男女で分かれていないらしく、トイレに行くといきなりオネイサンがいたりしてドキッとしてしまいました。
DAY3 : 新竹→苑裡 11/05

だいぶ生活パターンができてきた感じがします。就寝前に翌日の天気予報をチェックし、目的地とルートを決定、ネットで宿を予約する。朝は早く起きて暑くなる前に目的地周辺まで移動してしまう。夕方は宿に自転車を置いて徒歩で市街地を散策する。こんな感じだと安心して自転車旅行を楽しめます。あくまでも私の場合ですが。
さて、次の目的地は普通に考えると台中ということになりますが、できれば小規模の都市に滞在したいという気持ちがあり、少し手前にある海沿いの街、苑裡に決めました。ちょうど安く泊まれるホステルが見つかったというのも理由ではあります。

新竹の古い街並みを南下し、少し郊外に出たところでいい感じの朝飯屋があったので三明治を注文しました。

要するにサンドイッチなんですが、その場で鉄板で炒めた具材をはさんで提供してくれるので、とてもおいしいし、こういったところでもホスピタリティというか人の温かみを感じることができます。
日本にはもうこんな店はほとんど残っていないでしょう。強いて言うならセイコーマートのホットシェフが近いのかもしれませんが、これほどのメニューがありほぼオーダーメイドで好みのものを作ってくれるんだから、驚きです。サンドイッチのほかに、お好み焼きみたいなものや飲茶類もあります。もちろん豆乳も冷蔵庫で冷えています。

今日もグーグルマップに案内を頼むと、海岸線を走るサイクリングロードをしきりに勧めてくるのでそれに従い少し遠回りになりますが海沿いの道を進みます。概ねきっちり整備されているし、猛スピードで走り抜けるSUVに注意しなくてもいいので、頻繁に自転車を止めフロントバッグからカメラを取り出し野鳥を撮影しました。
台湾の西海岸は湿地になっているところが多く、いくつか保護地区に設定されているエリアもあり、実際にシギチドリの仲間、そしてサギ類も多く見かけました。風発もとても多い印象です。

基本的に快適な道中なのですが、野犬が多く注意が必要です。おとなしく愛嬌のある連中がほとんどですが、ごくまれに全速力で追いかけてくる輩も存在します。荷物を満載した自転車はかなり奇異な存在に見えるのでしょう。
さて、途中どうしても大便がしたくなったので一度海岸線を離れて市街地のコンビニに入り、さっさと大用を済ませ、水分と糖分の補給をします。
台湾はファミマの勢力が非常に強く、どこに行っても見かけるので、トイレと補給には苦労しません。入店時のメロディーがすっかり頭にこびりついてしまい、夢に見たほどです。

アイスも売っていますがもちろん割高(魯肉飯2杯食える)です。でもついつい手が伸びてしまいます。灼熱の自転車旅途中に頬張るアイスほど美味いものはないでしょう。
コンビニを出て少し漕ぐと、何やらお祭りのような行列に行き当たりました。台湾には大小さまざまな廟が存在し、日本の神社やお寺のように地域の人の信仰と交流の場となっているようです。

日本と同様、お年寄りの姿が多くみられますが、どこの廟もしっかり管理されている印象で、現役で使われこのように祭り的なものも催されているようです。
苑裡の手前に通霄という小さな町があり、台湾では珍しい神社が残っています。本殿はコンクリートと煉瓦の中国式の建築で正直そこまで大層なものではありませんが、立地がやはり日本の神社のそれで、日当たりの良い小高い丘に厳かに佇んでおります。間違いなく日本人の感性がそこには感じられます。

参道の脇には当時のままの社務所が残されており、こちらは木造の日本建築でかなり傷んではいますがおそらく修復の予定なのでしょう、足場が組まれていました。日本の台湾統治の実際はよくわかりませんし、肯定も否定もしないニュートラルな立場ではありますが、旧支配国の宗教建築が残っているのは稀かもしれませんね。
本殿の周辺は針葉樹の日陰になっていて風が抜けるとても気持ちが良い場所で、なぜか2時間ほどだらだら過ごしてしまいました。トイレも手洗い場もあるので体をふいてすっかりリフレッシュして今晩お世話になるホステルに向かいます。
ここも昨日の宿と同様に、玄関ドアには電話番号が表示されていて、そこに電話をするとドアロックの解除ナンバーを教えてくれるという仕組み。オーナーや管理人は常駐しておらず、このように遠隔管理をしているところが多いようです。

後でやってきたオーナーさんと少し話しましたが、おそらく私と同世代の好青年といった感じで、私が北海道から来たと言うと、毎年冬に家族でニセコにスキーに行っているとのこと。いい生活してんなー、というのが本音でした。南国でビーサンにスクーターというスタイルでホステルを経営し、冬は雪国でスキーを楽しむ。憧れますが私には縁のない生活だと一瞬で悟りました。

ここでは香港から来たよくしゃべるおばちゃん、台湾の青年などと長時間無駄話をしました。ホステルのメリットを存分に体感した次第です。
今日も2段ベッドの下段をあてがわれ、早速荷ほどきをして各機器の充電をします。通常ホステルのベッドにはこのようにコンセント、場所によってはUSB端子が設置されていて、自由に使うことができて便利です。一眼に使う単3エネループ、モバイルバッテリー、スマホの充電を忘れずに済ませておきます。

もちろん宿代も安くフリーWifiもあるので、他人とトイレとシャワーを共有することに抵抗が無ければ、断然ホステルをお勧めします。もちろん嫌なことも多いですけどね。

さっぱりしたので軽く街を散策しました。古い町並みが残っていて想像以上に趣のある素敵な市街地でした。観光客もほとんどいないのでおすすめの街です。いい感じの食堂もたくさんあるので、それらで食事を済ませてまたベッドの中で明日の行程を確認し気が付いたら寝落ちしていた次第です。
次回に続く。
