前回は福岡を出発し久留米、熊本、天草を経由し長崎にたどり着くまでの記録でした。こちらの記事を参考にしてください。
今回は旅の後半、長崎から福岡までのサイクリングです。
5/14:長崎~佐世保~平戸
私は疲れました。もう自転車を漕ぐ気になれません。それが朝一番の心の声でした。
とりあえず、早朝まだ通勤通学の皆さんの邪魔にならない時間帯に、長崎駅前のホテルから平和公園まで自転車を走らせ、観光らしいことをし、朝食のパンとコーヒーを胃袋に流し込んでから、部屋でどうしようかと考えました。
いろいろ調べていると、長崎から佐世保までワープする手段があるらしい。これを使わない手はないと、さっそく長崎駅の改札前で自転車を解体し輪行バッグに詰め込んで、シーサイドライナーという浮かれた名前の快速に飛び乗りました。
長崎駅は最近できた駅舎のようでおしゃれです。どこかヨーロッパにありそうな駅舎です。そしてシーサイドライナーに使われている車両もやさしくてちからもちな新型車両。鉄分高めの方々が乗車されていました。
時間帯、そして日曜日ということもあったのでしょう、乗客のほとんどが観光客といった感じの車内はのんびりした空気が流れていて、ゆっくり大村湾を眺めながら、そして車窓の景色の中に必死で自転車をこいでいる人を意地悪な目で探しながら、2時間の列車の旅を満喫しました。やっぱり電車の旅が一番!
車内は広めで輪行もしやすいと思います。そして車両の床の装飾が一面QRコードになっていて興味深い。どれか一つくらいエッチなサイトにつながりやしないかといくつか試してみましたが、いずれも反応しませんでした。
約2時間後に佐世保に到着。駅前でさっさと自転車を組み立てて、いかにも長崎から自転車できましたぁという風をまといつつこの日の目的地である平戸へ向けて出発です。
佐世保市内、なんかやたら外国人が多いなと思ったら、そうだ、米軍基地があるんでしたね、ここは。そしてやたらとバイクに乗っている人も多い。なにかバイク関連のイベントでもあるのかというくらいバイクがたくさん走っています。バイクとバイク乗りを毛嫌いしている私としてはあまり好ましくない街です。
前日の雨でチェーンのオイルが全部流されてしまい、ちょっとサビも出てきて音もうるさくなってきたので、町中にある自転車屋さんでちょっとだけチェーンオイルを差してくれないだろうかとお願いしましたが、やはりだめとのこと。もちろん代金は払うつもりなんだけど。
ボトルで買っても使いきれなくて荷物になるだけだし困ったものだ。数百円でチェーンオイル差しますよなんてサービスがあればこちらとしては助かるんだけど、自転車屋さんの立場で考えると、そんなことしても全く商売にならないから、まぁ、当然だよなと思います。
そんなわけで、シャカシャカ音をさせながら平戸に向かいますが、いくつかルートがあります。極力登りはご遠慮いただきたいので九十九島~佐々を通るルートを選択しました。
佐々までは比較的平坦で鼻唄交じりで余裕で前進をしましたが、その先は山道が続いて、なるべく先を見ないようにして少しずつ重いペダルを踏みこみました。体力は限界です。一日の半分を電車の中で過ごしたのにコノザマです。
平戸島にわたる平戸大橋は絶景でした。やはり橋は赤く塗ると映えるんですね。いや、色だけじゃなくて形もいいんでしょうけど。
平戸市街地は特に見どころはありません。景色がいい場所は島内にたくさんあるみたいですが、そこまで行く元気がもうすでにないので、この日も市街地のホテルにさっさとチェックインをして、お決まりの食堂探しの散策に出かけました。
日曜日だからなのか、行きたかったお店がことごとく閉まっていて、途方に暮れてコンビニ弁当かぁと思っていたらいい感じのお惣菜屋さんを発見。
各種お弁当と揚げ物がそろっていて、地元民だったら確実に通いたくなる、いい感じのお惣菜屋さんでした。酢豚丼とかアジフライなんかをたっぷり買い込んで650円。このお惣菜屋の隣に住むことができたらどんなにしあわせだろうか。
移動距離
- 電車 75.9km
- 自転車 46.1km
経費
- 飲食 1450円
- ホテル 5900円
- 電車代 1680円
5/15:平戸~伊万里~唐津
わたくし、さぼり癖がつきました。今日もどこかでワープできないか、そればかりを朝からずっと考えて、松浦鉄道を使うことに決め、たびら平戸口駅まで仕方なく自転車をこぎます。
日本最西端の駅という碑があり、さらに駅舎の中に鉄道博物館もある鉄道ファンにはたまらない駅なんでしょう。幾人かそんな人たちを目にしました。
特大のスーツケースを持った怪しい中華系の旅行者のおじいさんのほかに(写真を頼まれたので撮ってあげたら喜んでた)、周囲には特にだれもいないので駅舎の中に自転車を入れてベンチに座りながらゆっくり自転車を分解し、コーラを飲みつつ電車の到着を待ちます。
一人の男性がうろちょろしていました。車は東京のナンバープレート。駅の写真を撮ったりなんかソワソワしている様子。おそらく車で各地を旅しているのでしょう。
客観的に見ると男の一人旅はめちゃくちゃ気持ち悪いということに気がつきました。なんでなんだろうか。ちなみにこのおじさんとは唐津城でもばったり出会うことになります。数奇な運命です。
松浦鉄道の広報担当は西浦ありさ。このひと、多分かなりアザトイです。わざと胸元の開いた服をきて男を誘惑させつつ、いざ言い寄ってみると無視をするような、そんな女です。社内アナウンスの声でわかっちゃいます。
プロフィールにはこうあります。
大手広告代理店勤務を経て、地元の松浦鉄道に入社。
鉄道むすめ
地方にUターンしてきた女性によくある、この経歴。この「大手広告代理店」って具体的にどこのことなんでしょうかね。いつも思うんだけど。もちろんフィクションの存在です。よくできています。
電車を待っていると地元のご老人に「この装置は何ですか?」と聞かれたので「自転車です。疲れちゃったので電車で移動するんですよ」と答えました。
その後「おいくつですか?」「よくこの電車は利用するのですか?」と私からいくつか質問しましたが、こちらの言っていることが聞こえないのか、わざと無視をしているのかよくわからないけど、一人でずーっとじいちゃんはしゃべっていました。
そんなことをしていたら1両編成のディーゼルが到着したので、しゃべり続けるじいちゃんに軽く会釈をし車両前方から乗り込もうとしたら、「後ろ乗り前降り」とのことで軽く怒られてちょっと凹みます。
いやいや、旅行者にはわかりませんよ。来たらとりあえず一番近いところから乗るじゃんか。叱らないでよー
こちらも車内は広めで輪行にはうってつけだと思います。ぜひ利用してください。途中の駅には地元の小中学生が描いた絵が飾られています。とびぬけて上手だった一枚の絵をここにご紹介します。駅とローカル線の雰囲気に見事にマッチした素晴らしい絵でした。
ということで終着の伊万里駅までワープ成功です。この伊万里駅がなかなか面白くて、道路を挟んで松浦鉄道とJRの駅舎がそれぞれターミナル方式で向かい合っています。かなり珍しいのではないだろうか。
伊万里と言えば古伊万里、焼き物のイメージが強く名前はとても有名ですが、町の寂れ具合は群を抜いていました。市街地は朽ちかけた建物とシャッターが目につきました。おいしい和菓子屋さんでもないかとちょっと町をぶらぶらしましたが、それすらない。そうそうに市街を後にし、唐津へ向かいます。
唐津への道は気持ちの良い里山の景色が広がり快適なサイクリングになりました。よかったよかった。楽なのが一番。もうゼエゼエハアハアになるサイクリングはご免です。途中餅屋を見つけていろいろな種類の餅が入った350円のセットを買いましたが、どれも...まずい。
スーパーのパンコーナーにある和菓子みたいに、まずいぞ。こんなこともあるんですね。今回のたびではかなり食には恵まれていたので、運も尽きたのでしょう。この先食べるもの全部まずいのだろうか。(不吉な予感はこのあと的中します。)
さて、唐津に着くとまず目を引くのが唐津城だとおもいます。比較的最近建てられたお城で、歴史的な価値はないんだろうけど、なんせ街の一等地に、いい感じにそびえ建っていて目を引くのでついつい寄ってしまいました。
どこぞの城のようにエレベーターはありませんでしたが、なかはちょっとした博物館になっていて、この城の呪われた(?)歴史や唐津焼についても知ることができます。500円の価値は十分にあります。そして天守からの眺めが素晴らしい。虹の松原を一望できます。
この日は旅館が見つからなかったので唐津市街にあるこぎれいなビジネスホテルに宿泊しました。いつものように荷を解いてシャワーを浴びて着替えてから、さびれた食堂探しに出かけます。
究極の瀕死の食堂(失礼だな、おまえ)を発見し一人いさみ足で店内に入ります。店内は最低でも40年くらい時が止まっている感じで、猫とその仔たちが私の目の前(テーブルの上)を通り過ぎていきます。カラーボックスのドラゴンボールは16巻で止まっています。
肉丼というなんとも肉肉しいものを注文し、店内を見ながら出来上がりを待ちました。
出てきたものは、ちょっとヤバかったです。写真に撮ってもたぶんモザイクをかけなきゃいけないので、写真はナシです。
たぶん私じゃなかったら残していたでしょう。私は胃腸が弱いくせに、ほとんどのものを食べる度胸と優秀な味覚だけは持ち合わせていて、アフリカのド田舎の食堂で出てきたやばいものまで平気で平らげてきたのですが、そんな私もちょっとヒクくらいの肉丼が出てきました。
たぶんだけど、卵でとじるのを忘れています。(笑)
卵でとじてご飯の上に乗っかるはずだった汁が全て丼の下に落ちてしまっていて、ごはんの上にはちょこっと玉ねぎとやたらと臭い牛肉の切れ端が申し訳程度に乗っかっています。
誰かが丹精込めて作ったものを残すくらいな死んだほうがいいと考えるくらい、食に関しては変なところで原理主義なわたしは、仏の目と口と鼻で、すべての感覚を遮断して、黙々と胃袋の中に肉丼押し込みました。
店名は伏せます。でも唐津駅のそばです。ご興味のある方はぜひチャレンジしてみてください。瀕死ではなくて死んでました。(ごめんなさい)
移動距離
- 電車 32.9km
- 自転車 35.4km
経費
- 電車代 1380円
- 飲食 1320円
- ホテル 6820円
5/16:唐津~糸島~福岡
明日は北海道に帰る日なので今日が実質最終日になります。天気もいいしちゃんと自転車旅らしいことをしようと決意をしてホテルを出発しました。
唐津市のはずれから虹の松原という、ものすごい数の黒松が植えられている地帯があって、しばらく海岸線に続いています。それを過ぎた後もきれいな海をまじかに見ることができる海岸線の平坦な道が糸島市まで続いています。
もしあなたが福岡に住んでいて、日帰りで輪行サイクリングに行く場所を探しているのであれば唐津が絶対おすすめです。距離も60km弱と程よいし鉄道も並走しているし、好条件がそろっています。
そんな感じでほぼ平坦な道を途中でアイスを食べながら進むとすぐに福岡市内に入ります。最終日なのでちゃんと観光をしようとまずは福岡市博物館に立ち寄りました。こちらのウリはなんといっても「金印」です。
常設展入ってすぐのところに金印は鎮座ましましております。真っ暗な展示室内に忽然と浮かび上がるピッカピカの小さなハンコ。ガラス板の上に置かれその下には鏡が置いてあり、ちゃんと印の文字を読むことが可能です。
金印のほか、福岡の歴史にまつわる展示も素晴らしいの一言でした。特に鴻臚館時代のブースは興味深く拝見しました。そしてここに来る直前に元寇防塁(上の画像)も見てきたので元寇にまつわる展示も楽しめました。なんか最終日になってやっと観光らしくなってきました。
その後、ペイペイドーム、大濠公園、福岡城址とちゃんと観光名所を経由して、繁華街天神にあるホテルにチェックインしました。福岡城天守跡まで登るのはちょっと疲れます。どうして偉い人は高いところが好きなんでしょうか。令和の今、高いところが好きなのは○○と○○と言われてしまいますが。
夜、人でごった返す中州やその周辺は回避して、博多駅の向こう側にあるちょっとさびれたエリアの中国人ご夫妻が営む中華料理屋でただ一人の客として堂々と回鍋肉定食を食べ、セブンイレブンでLサイズのコーヒーを買い部屋に戻りました。
福岡市内は自転車のマナーが悪くてちょっと驚きました。かなり人出も多くて歩道は込み合っているのに、そんな中を老いも若きも男も女もカテゴリに属さない人も、自転車で疾走していきます。いつ衝突してもおかしくはない、そんな光景に驚きました。
車の運転マナーはとても良いのにな、九州は。なんだかよくわかりませんね。
移動距離
- 自転車 63.1km
経費
- 飲食 1620円
- ホテル 5790円
5/17:福岡~札幌
朝、飛行機まで時間があったので、博多駅のそばにある東長寺に立ち寄りました。拝観料50円でお線香を立てて大仏を拝んで謎の「まっくら闇地獄めぐり」も楽しめる穴場だと思います。真夏の暑い日はいろんな意味でヒヤッとできるでしょう。おすすめです。
そして、1週間ぶりに福岡空港に戻ってきました。地上階がチェックインカウンターで便利です。往路と同様、自転車も難なく預けることができて保安検査場を過ぎたところにあるドトールで発着する飛行機を眺めて過ごしました。
旅も終わりです、また退屈な日常が待っています。あーあー帰りたくない。でも帰らなくてはいけない。帰ったらやりたいことが、旅行中にたくさん頭に浮かんだので、それらをまとめながらおいしいコーヒーをすすりました。
新千歳空港から快速エアポートに乗り、札幌で乗り換え、自宅の最寄り駅へ。自宅まではすぐの距離なんだけど、自転車を担いで歩くのもアレなので自転車を組み立てると、前輪のブレーキがズレてしまっていました。おそらくどこかにぶつかったのでしょう。こういうことも起こりうるので、輪行の際はブレーキやギアの調整の仕方くらいは勉強して行くべきなのかもしれません。
この点、機構がシンプルなVブレーキは有利だと思います。直すのも面倒だったので、自宅までは後ろブレーキのみで帰りました。
移動距離
- 飛行機 1420km
- 自転車 9.0km
経費
- 飲食代 680円
まとめ:1日60キロがちょうどよい
ということで、九州北西部を自転車でぐるっとまわってきました。
できれば普段地元の人たちがどんな景色をみてどんなものを食べて、何を感じながら生活しているのかを知りたかったので、こんな感じのつかみどころのないふわっとした旅行になりました。
普段は地べたに座ることはないんだけど、なぜか、自転車で旅行をすると地べたに座って目の前の草をいじって、空を見上げながら深呼吸したくなります。こんな普段はやらないことをするためにわざわざ遠くまで出かけているような気もします。
この秋に、お金と時間があれば台湾もしくは韓国を自転車で周ってみようと画策していて、その予行演習として、じぶんがどの程度チャリを漕げるのかを知るための旅行でもありました。
そして、わかったことは以下の通りです。
- 移動はまだ涼しくて元気な午前中にする
- 一日60キロ程度が限界かも
- 午後は徒歩で観光、おいしいものを食べてさっさと寝る
今回は当日のお昼前後にその日に泊まる宿を予約しました。ネットで予約不可能な宿は電話で直接予約をしました。とある島に行ってみようと当日に予約の電話をしましたが、2件とも断られてしまいました。これが普通だと思います。
海外ではどうなんだろうか。大都市だったら着いてから直接宿を探して回っても大丈夫なんだろうけど、ちいさな町ではそうもいかないだろう。その点テント泊ができる連中は無敵だよな。私はテントでは全く寝ることができないので、うらやましいです。テントで眠ることができる人はその強みを十分生かして、私の分まで人生を楽しんでほしいと思います。
まとめデータ
- 総額 74,262円(航空券、電車代などすべて含む)
- 総移動距離(自転車)416.5km
見ることができた野鳥
- コチドリ
- ホオジロ
- コサギ
- アオサギ
- ウミウ
- ツバメ
- スズメ
- ハシボソガラス
- ムクドリ
- ヤマガラ
- コガラ
- カワラヒワ