テンカラ糸巻きの自作、その方法と面白さ

テンカラは道具が少ない釣りです。

そして糸巻きは必ずしも必要な道具ではないのですが、仕掛け長さの変更、ロッドそれぞれに仕掛けをつけておく場合には、必需品となります。

市販品にも良いものがありますが、やはり自分が日々使う道具にはこだわりたいところです。

この記事ではテンカラ糸巻きの製作について、解説を交えつつ販促をしていこう、そう企んでおります。

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以前作っていたテンカラ糸巻き

4年ほど前まで、テンカラ専用の糸巻きを作っていました。上の画像のものですが素材は道産のナラで大きくて素朴なものでした。

巻きやすく、無垢の素材感が好評で思っていたより売れました。200個弱は販売したはずです。テンカラ以上にフライの釣り人に人気がありました。

手元に残っているのは初期に制作した試作の一つだけです。かなり使い込んでいい感じに変色しています。

この糸巻き、いま改めてみると、けっして悪くはないのですが問題点もいくつかありました。

  • 大きく重たい
  • 割れやすい
  • 重ね収納に弱い(毛ばりがはみ出す)

「大きく割れやすい」という弱点は一つのことを変更するだけで解決できました。

巻きつける部分の深さは実はあまり必要がないということに気がついたのです。浅くてもほどけやすいということもラインが傷みやすいということもないのです。3ミリあれば十分といったところです。

そして、旧作は表面近くにフック掛けがあるので毛ばりを引っ掛けやすい反面、重ねたときに毛ばりが飛び出して傷んでしまうという弱点がありました。

改めて考えると、テンカラ用の糸巻きには二つの用途があるんですよね。

  • ロッドに差して歩く場合
  • ロッドから完全に外してカバンの中で仕掛け巻きとして使う

どちらの用途でも使えるというのが理想形となります。

素晴らしい市販品も

わたしも使っていたこちらの商品は、重ねて収納する際にはとても便利な商品です。

円の中心部分に毛ばりを引っ掛ける金物が付いていて、簡単かつ気楽に毛ばりをかけることができます。

毛ばりの形も崩れずにストレスも感じません。非常によくできた商品ですが、こちらにも弱点はあります。

  • 真ん中にロッドを通せない
  • 指をかけることができない
  • 質感と配色がイマイチ

要するにこちらの商品は、「重ねて収納する」ことに特化したものなのです。

私はフィールドによって仕掛けの全長を変えるので、ポケットやカバンに収納して使うという意味ではいまだに重宝していますが、やはりプラスチックなので質感面では劣り、配色もロッドとイマイチ合わない感じがしています。

再制作に向けて

全体像

ということで、以前自分が作ったもの、市販品などいろいろ使ってみて感じたことを改めて形にしたいと思いました。

ここまでお話したことを踏まえつつ新作を作ってみます。以下の点を特に意識して設計をしてみました。

  • 軽く小さい
  • 巻きやすい
  • 割れにくい
  • 巻き感が良い
  • ロッドに差せる
  • 重ねて収納できる

コルクを巻いてみる

巻き付け部分にコルクを巻くことにしました。先ほどご紹介した市販品のようにEVAなどフォーム材でもよいのですが、見た目的にやはりコルクがいいでしょう。ラインもしっかり食いつきますし、隙間に喰いこませて固定をすることも可能です。

水に強く弾力性があり衝撃にも強い、まさにうってつけの素材です。きれいに貼るのはちょっと難しい作業になりますが。

中心穴径

これは非常に難しい選択でした。方向性的にはブランク部分に通すか、グリップのコルクに差す、どちらかになります。

後者の場合は大きめの中心径を確保する必要があって、22ミリはほしいところです。でも使用するロッドによってグリップの形状や直径は変わってくるので、ぴったり合わせて作ることは不可能です。

ブランクの一番太いパーツ(グリップが巻かれるパーツ)の一番細い部分(先端)はおおむね12ミリ前後でしょう。なのでロッドに通して使用する場合の適切な中心穴径は15~18ミリと言えます。今回の試作はとりあえず18でいこうと思います。

フック掛け周辺

旧モデルは円をくりぬきそこにステンレスのバーを通す構造にしていました。フック掛け部分を正円にすると見た目もよいし加工も楽なのですが、無駄になるスペースが多くなります。

毛ばりをおさめる部分は、最低限の幅(目安10mm)が確保出来たら、あとは長さが必要になります。だから必然的に楕円形か長方形がベストな形となってきます。

あとは見た目の違和感のなさに関わることで、制作者の感性に拠るところ。私は長方形を選択した次第です。

全体の大きさ

巻き付け部分の深さを思いきって浅くしました。実際この部分の深さはそんなに必要がないので、平均して3ミリくらいにしてあります。浅くすることで薄い表面材の飛び出しが少なくなるので割れにくくなります。そしてその分全体の径を小さくしてみました。

手削りのためばらつきは出ますが、表面部材の直径は70~72mmに収まるようにしています。芯材は直径60mm、そこに4ミリのコルクを巻き付けるので、立ち上がり(巻き付け部分の深さ)は約3mmとなります。

完成した試作品を手に持つと、ちょうどよい大きさであることがわかります。

細かい工夫

本体を限界まで薄くしているので、糸を巻き付ける際に失敗しがちです。ラインを本体に巻き付けることができずにすっぽ抜けてしまうことがある。

それを防ぐために表面部材は内側に向かって斜めにカットをしています。正直手間がかかりますが、これをしておくと格段に巻きやすくなるのです。作業は実は楽しいので苦にはなりません。

制作工程

型紙の制作と荒どり

型紙は原寸の図面を厚紙に貼り付けて切り抜いておきます。それを2mmの薄板に写して鋸で荒どりをします。特に木口側は堅いのでなるべくギリギリまで攻めると、この後の切り出しが楽になります。

円の切り出し

小刀で鋸で落とせなかった部分を切り出していきます。よく研がれた小刀を使うと数分で作業は終わります。慣れないうちはけがに注意です。

この時に内側になる側に向かって傾斜をつけておきます。そうすることによってラインが巻きやすくなるのです。

板の張り付け

表面材と芯材を張り合わせます。

それぞれに型紙から中心を写し、小さな穴を開けておいて、そこに釘などを差してズレない状態で接着作業をします。中心がずれてしまうと後々面倒なことになるので、このひと手間は重要となります。

中心と毛ばり用の穴をあける

中心穴はそのままドリルで開けます。片側からだとズレるので両側から開けるようにします。毛ばり用のたて穴はドリルで荒く開けた後、のみで正確に突いて開けます。意外と目につく部分なので加工の制度が大切です。

毛ばり掛け棒を入れる

1.5mmのドリルで下穴を開け、そこに真鍮の釘を入れます。ここもズレると使いづらく見た目も悪くなるので、細かい作業が必要とされます。

ライン通しの加工

ついつい忘れがちなのですが、この切込みを入れておかないとラインをかけることができなくなります。

毛ばりをかけてから最初に通すところ、あとはいくつか溝をつけておきます。アサリのない薄いノコで慎重に引きます。

仕上げと塗装

サンドペーパーで研磨をします。120→水引→180→240と研磨をしていきます。

水引とはただ木地を濡らすだけの作業です。濡らしたウエスで軽く拭きます。これをすると、制作中についた打痕や傷が浮くのできれいに仕上がります。濡らしたあとはしっかり乾燥するまで待って180の研磨に移ります。

木地が仕上がったらオイルを塗布します。1回目はハケでたっぷり塗り、拭き取らずに染み込ませます。2回目以降は目の細かいペーパーやウエスで磨きながらオイルを塗っていくイメージです。

オイルの乾燥には非常に時間がかかります。できれば1週間は間隔を開けたいところです。

コルク貼り

オイルが完全に乾いたら最後に巻き付け部分にコルクを貼っていきます。この試作品では2mmのコルクシートを2枚張り合わせています。合計4mmの厚さがあるので、しっかりとラインを挟み込むことが可能です。

一周して張り合わせる部分は斜めにカットしてなるべく凹凸が出ないように仕上げます。しかしコルクは伸縮するので、練習と本番では差が出てしまい失敗しがちです。長めに切っておくと後でナントカ修正できます。

接着剤は水や衝撃に強いゴム系が良いでしょう。G17が無難です。

これで完成となります。

完成!近々販売の予定です

ということで完成しました。材はウォルナットにしました。

試作品として微妙にあちこち変化を加えながら3つほど作ったところで納得のいくものが完成したので、販売をしてみようと思います。

近々このページに販売のリンクを作る予定なので、ご期待いただけますと幸いです。

当たり前の感想なのですが、やはり自分が頻繁に使うものはついつい真剣に制作してしまいますね。どうすればもっと使いやすくなるのか、そればかりを考えてしまい、作業の効率や量産ということは完全に忘れてしまいがち。

あぁ、たのしい再制作になりました。

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