狭い川で、どうしてもテンカラのキャステイングができないときにどうすればいいのか?
先日の釣行の際、玉ウキを使った毛ばり釣りを試してみました。そのメリットとデメリットについて真面目に考えてみましょう。
テンカラから浮きを使った釣りへ
上図のように玉ウキとガン玉おもりを使った毛ばり釣りにすると障害物が多いエリアでもロッドを振り回すことなく正確にキャスティング(テンカラのように振らずに振り子の原理でポイントに落とすだけ)することができます。
こうなってしまうともはやテンカラとは言えませんが、とりあえず、一つ一つのポイント見落としなく攻略していくためには仕方がありません。無理をしてテンカラを振り回し、周囲の木に引っ掛けていたのでは目も当てられないので。
玉ウキを取り、浮きゴムだけにして普通にテンカラをするという方法もあるので、ポイントによってスタイルを簡単に変えることもできます。まさに普通のテンカラとウキ釣りのいいとこどりの方法なのですが、当然ガン玉おもりは付いている状態なので普通のテンカラより早く沈みます。なので釣りの仕方には工夫が必要になります。
以下に玉ウキを付けることによるメリットとデメリットを挙げてみます。
玉ウキをつかった釣りのメリット
- 周辺の木々に仕掛けを引っ掛けることがなくなるので、フィールドに針や糸を残す可能性が下がる
- 深い淵や落ち込みでの釣りの仕方の選択肢が増える
- アタリが目に見える
- 毛ばりを流すタナを感覚ではなくきっちり決められる
- 逆光や強風下でも釣りになる
玉ウキをつかった釣りのデメリット
- 不自然な着水になる
- ナチュラルドリフトさせられない
- 魚が食いつくタイミングが短くなる
- カッコ悪い
当然メリットとデメリットはあるわけですが、以下ではデメリットについてちょっと深掘りしてみましょう。
追記2022/05/21
ガン玉おもりを付けないで玉ウキと毛ばりだけでも釣りになることがわかりました。深い層をねらうときは当然おもりはあったほうが良いのですが、小河川で背をねらうときなどは、むしろおもりをはずして玉ウキと毛ばりだけにしたほうが自然に流れてくれます。
なお、浮きゴムの黒に魚がアタックしてくることが多いです。そういうときは、浮く毛ばりに付け替えましょう。玉ウキがあってもいい感じにドライテンカラになります。
カッコ悪いという問題は当然ついてまわりますが。
毛ばりが自然に漂うまでの時間
この方法だとキャスティングをしたあと、毛ばり、ガン玉、玉ウキ、それぞれほぼ同時に着水することが多いです。3者がごちゃっと水面に落ち、玉ウキはその場で浮き、ガン玉は毛ばりを引き連れて沈んでいきます。
この時、毛ばりはかなり不自然な動きをします。重たいガン玉に引っ張られるように川底へと沈んでいくからです。こんな怪しい毛ばりに食いついてくる鈍い魚はいないでしょう。
そして玉ウキ下の仕掛けが伸びきったらそこで初めて毛ばりがガン玉を中心にゆらゆらとある程度自然に漂うことになります。
仕掛けの着水から毛ばりが自然に漂うまで、魚は食いついてこないわけで、この時間は無意味な時間になってしまいます。
渓流釣りではある程度流れが速く、短い区間を攻略していく必要があるので、このロスタイムは大きく響きます。仕掛けが伸びきって毛ばりが自然に漂い始めたと思ったら、もうすでにだいぶん下流まで流されていて仕掛けを回収しなければいけないところまで行ってしまっている、ということです。
この着水後に仕掛けの準備が整うまでの時間、というのも十分大きな問題なのですが、ほかにもうひと大きな問題があります。
玉ウキというイブツが川を流れるということ
玉ウキは水面にぷかぷか浮きます。そして、その下におもりと毛ばりがぶら下がっているのが、この玉ウキを使った釣り方の特徴です。
極限まで無駄をそぎ落とし、細い糸と毛ばりだけで構成されたテンカラと比べると、やはりこの玉ウキを使った釣り方は「無粋」と言わざるを得ません。
自然に溶け込むことを望んで釣りに来ているはずなのに、あんなものを水面に浮かべなければいけない。そして、肝心のアタリの取り方も、五感を研ぎ澄まして見つけるようなものではなく、ただ流れていく浮きを見つめるだけになってしまい、まさに思考停止の釣り方です。
トップで出せそうなときは先に仕掛けを付け替えてドライテンカラを試したいのですがそれもなかなか面倒なので、結局そのまま玉ウキ仕掛けを流してしまいます。私に気の長さがあればよいのですが。
自分のスタイルと釣りを通して実現したいこと
なぜこんな一見どうでもよいことに私があーだこーだいうのか不思議に思う人がいると思いますが。理由は以下のようなことです。
好ポイントを逃したくはない
まず、いいポイント周囲がやぶに覆われていたり、木が立ち込めていたり、倒木の影や河原の樹木の影になっていたりします。これはテンカラを振り込むにはあまりにもリスクが大きいのでそういった場所ではキャスティングを見送る、というのが以前の私のスタイルでした。
要するに、釣れる魚だけ釣る作戦だったわけですが、やはり貴重な好ポイントでは仕掛けを流してみたくなるものです。そこで玉ウキの出番というわけです。
テンカラの限界を突破したい
釣りには「釣り方」が存在していて、それぞれの釣り方には限界があります。一長一短といったほうがいいでしょうか、ルアーにできないこと、フライにできないこと、そしてテンカラにはできないことがあるわけです。
玉ウキを使うと、その限界をちょっとだけ突破することができるので、ついつい使いたくなってしまうのです。
ということで、純粋なテンカラで行くべきか、玉ウキを付ける無粋な釣りでいったほうが良いのか、迷ってしまうというわけなんです。
まとめ:自分の釣りの目的とは?
鳥も魚も好きな自分として、もっとも避けたいのはそれらを傷つけることです。
それなら釣りなんかやらなきゃいいのだが、唯一楽しいと感じる川歩きをやめたら、ほかに人生において楽しいと思えることがなくなってしまいます。だからこれだけは許してください。
玉ウキを使うと周囲のブッシュに針をかけることがなくなりました。いかに罪悪感を感じないで釣りを楽しむかが第一目標なので、これはとても精神衛生上好ましいことです。
釣りは魚の命を弄んでいるということはわかっていますし、どんな言い訳をしても自己中心的な遊びであることはわかっているのですが、そこは自分が今したいことしたくないことの中庸を探っていこうという結論に至りました。
一時期は考えすぎて釣りができなくなっていたので、そこからは一歩踏み出した感じです。