釣りガイドのご依頼をいただきましたので、楽しんでいただけるようきっちり下調べをしご案内をさせていただきました。
雨も混じるかという予報だったのですが、フタを開けてみると晴れの微風、暑くも寒くもない絶好の釣り日和となりました。あとは魚が出てくれたら言うことはないのですが、果たして顛末は...
市街地を流れる支流
まずは魚影が濃くて私がメインで通う川で釣りをしていただきました。が、なかなか良いサイズのニジマスが出てくれない。その原因はなんとなくわかっていましたが、私の役目は釣技指導ではなくて魚がいる川にご案内することなので、そこはお客様のスタイルで釣りあがっていただきます。
でもせっかく来ていただいているのだから尺上を釣っていただきたいという気持ちもある。
かといって、あーだこーだ聞かれてもいないアドバイスをするのもなんか違う気がします。ここの匙加減は非常に難しいところです。このように迷ったときには黙っているという選択を私はしがちです。
当たり前ですが釣り人に上下関係はありません。それぞれが好きなように釣りをするのが大原則だと私は思っています。だって趣味だもん。
私が思った大きい魚が出ない肝心のその原因。それはアプローチにあると思っています。小さい魚は雑なアプローチかつ近距離に立っても平気で出てくるのですが、大きい魚は人間の姿が水面越しに見えている状態だとそう簡単に出てきてくれません。
ルアーでトラウトを狙った経験がある人ならわかると思いますが、ルアーを追ってきた魚がこちらの存在に気がつき、目が合った瞬間にくるっと反転して逃げ帰っていく、というのを目撃したことがあるはずです。私はそれでなんども悔しい思いをした。
大きい魚を釣るためには、やはり過剰と思えるくらい静かに歩き、身をかがめて接近すべきです。ルアーの人は良くも悪くも飛距離を出せるので「棒立ち」でやる人が多いのですが、その原則は変わりません。
いやむしろ、水面にばちゃっと落とし、ド派手に泳がせるからこそ、人間の存在に勘付かれないようなアプローチは重要なんでしょう。テンカラを始めてからアプローチの重要性をより感じるようになりました。
ルアーを目で見ながら操作をしたい場合、ある程度高い視点からリトリーブする必要があります。ほかの釣りのように身を屈めて水面と近い視点となると、水中の障害物もかわせないし、魚のチェイスを見ることもできなくなります。だからルアーの泳ぎを高い位置から「見たい」気持ちはよくわかります。
もしこれを読んでいる人でルアーで大物が釣れない!という人がいましたら、ぜひ頭の位置を普段より下げて、ルアーがよく見えない状態でリトリーブする癖をつけてほしいと思います。
「自分が釣りにくいほど、大きい魚はかかりやすい」そうとも言えるのではないだろうか。私がやっているロングラインテンカラはとてもやりづらいけど、よく釣れます。特に強風下ではもう嫌になるくらい難しい。
川選びはむずかしい
私は普段毛ばりで魚を誘う釣りをします。毛ばりは水生昆虫や陸生昆虫、要するにムシ全般を真似るものです。見た目もそうだし、流し方食わせ方もムシをまねします。
だから、話を恐ろしく単純化するとムシがたくさん水面に落ちる川では効果を発揮します。
一転して、ルアーは基本的に小魚を意識した誘いになります。これは実際には違う場合もあり、俗に言う”リアクションバイト”がそれで、なんかあやしいものがキラキラしているからちょっかいを出してみようとアタックしてくる例です。反射的に襲ってしまうのです。
話を戻しますと、ルアーは小魚、ウグイやトラウトの稚魚がたくさん泳ぐ川でより有効ということになります。
私が「釣れる」と思っている川は、実は「毛ばりだと釣れる」川なんだろうと思います。さらに突っ込んで言うと「テンカラだとよく釣れる川」ということになります。なお「テンカラだとよく釣れる川」=「フライでよく釣れる川」とも限りません。ほぼ同じなんですが、アプローチと毛ばりの操作が違うので、厳密に言うと違ってきます。
趣味として楽しむ釣りびとはここまで気にしなくてもいいと思います。魚がたくさんいてヤル気があるのであれば、どんな方法でも釣れてしまうものだと私も思いますが、やはりガイドをするとなると相手の釣り方に合わせた川選びが大切になるのでしょう。
ということを今回なんとなく思ったわけです。やっぱりルアーもやるべきなんでしょうね。ちょっと考えてみます。
某本流で粘る
なかなか良いサイズのニジマスが出てくれないので、川を変えて悪い雰囲気を断ち切ることにしました。土曜日ということもありめぼしいポイントには釣り人が真剣な顔つきで水面をにらむ様子があちこちで見られました。
入渓予定の地点にも釣りびとらしき車が停められていたので、やむなくすこし上流のポイントに入りましたが、これが奏功した次第です。
まずはお客様のルアーに2度アタリがあり、明らかに魚がついていてルアーを追ってきているのがわかります。こういう時のアタリはまさに僥倖。
魚を一匹でも出したい気持ちがあったので私も後ろで釣りをさせていただきます。私の毛ばりにも反応がよく、最初のイワナは私が釣り上げる形になりました。本流としては小さな30cmのイワナでしたが。
その後。同じポイントから立て続けに35、34㎝のイワナと30㎝のニジマスが私のテンカラに出てきました。動画は後ほど。
そして、お客様のルアーにはその後目立ったあたりはない様子。このまま時間切れかなとあきらめかけたその時、下流でしなるロッドと水しぶきが見えました。
そして無事にランディング。お客様も私もホッと胸をなでおろしました。
案内される側にもプレッシャーはあるはずですから(私からのプレッシャーは”強め”だと言われています)、このイワナはおじさん二人のプレッシャーを開放した立役者となり、その顔には我々以上の達成感がなんとなく見て取れました。スリムでキレイな一匹です。尺ジャスト。
その後、脱渓地点のそばの支流流れ込みでこの日最大の35cmの肉厚なイワナを見事に追加していただき、無事にガイド釣行は終了ということに。毎回、こんな風に何とかなるものなんですよね、不思議と。
何とかなるのは、運とかその日の流れではなくて、やはりお客様が工夫をし、試行錯誤をした結果なんだろうと思います。半日という短い時間の中でも魚の反応や同行者の様子からいろいろと経験を積み、それをすぐに実地で現場で生かすことができるのが、渓流釣りの面白いところだと思います。
最後に、私が釣ったイワナとニジマスの動画を載せておきます。
サイズはそこまでではないんだけど、本流の流れの中で釣ると非常に面白い。逃げ込まれるとまずい障害物もないし、相手も本流の流れの筋を利用した抵抗を見せてくれるので、ランディングまでのやり取りを楽しめます。
普段より水量は少なめでしたが、虫が多く出ていたのと水温が高めだったこともあり活性は高かったようです。今年の初夏の北海道は気温は低いんだけど水温は高めというコンデションです。そして相変わらず雨不足です。
この区間では数えきれないほど釣りをしていますが、こんなに反応が良いことは珍しい。ニジマスは下流の湖を行き来しているのでしょう。魚体がサクラマスのようになっていました。このサイズでもニジマスなので結構走って面白い釣りになります。
釣行データ
天気と気温
- 晴れ時々曇り
- 現地最高気温16度
釣った魚(釣行者2名)
- ニジマス6匹(30cm/≒20cm×5)
- イワナ5匹(35cm×2/34cm/30cm×2)
確認した野鳥
- ウグイス
- シジュウカラ
- ヤマガラ
- オオヨシキリ(鳴)
- ツツドリ(鳴)
- キジバト(鳴)
- コゲラ
- アカゲラ
- ハクセキレイ
- カワガラス
- ハシボソガラス
この日ではありませんが、自宅のそばでエゾセンニュウの初鳴きを聞きました。
今シーズンはオオルリをみたいな、あわよくば近距離で写真に撮りたいなと思っているのですが、まだ出会えていません。時期的に来ているはずなんですが。
何気にカッコーもまだ聞かないですね。アオバトは次回くらいに聞けるんじゃないだろうか。今から楽しみです。