哲学者の孤独と孤立から現代社会を考える

あなたは普段、孤独を感じていますか?

孤独を感じるのはどのようなときで、そのとき心の中では何が起きているでしょうか?

深い孤独を経験した二人の偉大な思想家の言葉から、ひとりでいることの大切さを改めて考えてみましょう。

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ルソーの孤独と向き合い方

ルソーが孤独を強く意識したのは、迫害を受けて祖国を失ったそのときです

そして、迫害から逃れるさなかで一時を過ごした湖の孤島で、ひとりの時間の効能を知ることになります。ひとりで散歩し、湖に船を浮かべてあてもなく漂い、植物を観察して心の落ち着きを取り戻しました。

迫害によって孤独を経験しましたが、人間と社会は愛し続けていたし、常に接点を求めていたのがルソーです。

私ほど人付き合いが好きで、人間を愛する者はいないというのに、そんな私が、満場一致で皆から追放されたのだ 

ルソー「孤独な散歩者の夢想」冒頭より

実際に迫害を受けてはいましたが、被害妄想が強かったという側面もあり、このような極端でユニークで皮肉めいた言葉になっています。

実は誰よりも人間が好きで、みんなを愛したいしみんなから愛されたいルソーでしたが、自分の意志をしっかり持ちそれを行動に移すことによって、結果的に社会の中にたくさんの敵を作り、友人は彼のもとを去っていき孤独になってしまいます。

彼が示した意志とは、簡単に言うと当時のフランス社会への批判です。

都会の気晴らしのアソビ、暇つぶしの娯楽に時間を費やし、嘘やお世辞、飾り物など虚飾に囲まれていると、本当の人間が見えなくなって自分も他人も愛せなくなってしまう。

なので、人間を愛し続けるには孤独になることが最良だとしました。

人を愛し続けるために人と距離を置く、一見矛盾するようですが、最も近くにいていつも話をしているのは、自分という人間だと気がつくことができます。

他人を見るときと同じように、自分がどれだけ信用できる人間かを改めて観察してみる。自分をよりよく知ると、本当に必要な人間関係に絞るようになるからです。

世間に背を向けたのではなく、厄介なしがらみから抜け出せたと考えたのだが、実際のところ厄介なしがらみが「社会」であり、そこから抜け出すことは孤独を意味します。

やはり田舎と自然が、人間、特に自分を理解する環境としてはベストだと結論付けます。かなり端折った説明なので詳しくは彼の経歴と著書からエッセンスを取り出してみてください。

みずから選んだソローの孤独

ソローもやはり、当時の一般常識からは浮いていた存在です。

しかし、ルソーが迫害と被害妄想から孤独に陥り、その中から結果的に救いを見つけたのとは違い、ソローは自ら選んで孤独に身を置きました。

孤独は寂しいことではない、むしろ贅沢な時間だというのが両者に共通する意見なのですが、ソローは初めからそれを期待してそのような状況下に身を置いたのです。それが有名なウォールデン湖畔での2年2か月に及ぶ自給生活となります

ソローには一人で考え仕事をする時間が必要でした。

なぜなら、人間が最も生産性が高い状態とは、ひとりでいる時であると考えていたからです。

読書をしている人、思索をしている人、仕事をしている職人。人間は一人のときに最高の力を発揮します。そして活動のなかで自分の原則を見出し、大切にする価値観を発見して成熟し、また社会に戻っていくこと。

成熟した孤独者としての個人が交わるときに、人間関係はさらに成熟していく。

そんな誠実で成熟した少数の人とのみ交わり、ひっきりなしにやってくる誰かに会う必要はないのです。誠実な人を目の前にしたとき、自分を偽る必要がないからで、さらに不誠実な人は一緒にいるだけで、心ここにあらずだから。

自分をわからずして他人などわかるはずはないし、他人を理解することなんてそもそも無理なのだから、わかっているのは自分自身だけで構わないとソローは断言します。

そして、とてもシンプルな考え方ですが、孤独は何よりも精神的にも物理的に身軽です。

相手の予定に合わせる必要がない、相手を待つ必要がないので、いつでも好きな時に好きな場所へ行くことができる。自由と孤独はいつもセットということもソローは理解していました。

孤独に対するふたりの共通点とは?【まとめ】

ソローはキレモノの優等生で、ルソーは迷える天才でした。

なので孤独に入り込む方法も、対処の仕方も異なっていましたが、孤独というものはどういうものか、という結論は同じでした。わたしの言葉ではありますが、二人が至った結論はこんなところでしょう。

「人嫌いになると孤立し、自分の意志を持つと孤独になる」

そして、二人は孤独をこんなたとえで語ります。

たとえバスティーユの監獄、目を楽しませるものが何もない牢屋の中であれ、私はこうした夢想に遊ぶことができるだろう   

ルソー「孤独な散歩者の夢想」

屋根裏の隅にクモみたいに閉じ込められても 夢を持ち続ける限り、ぼくたちの世界はちっとも狭くなったりしない。

ソロー「WALDEN」

また、二人は同じようなことをして、ひとりの時間を満喫します。

湖の真ん中まで来ると、ボートのなかに長々とあおむけに寝そべり、空を眺める。あとは何もしない。水の流れにまかせてゆっくりと漂う。

ルソー「孤独な散歩者の夢想」  

湖の真ん中までボートをこぎ出して、あとはそよ風に任せて、ごろんと横になりながら空想にふけって夏の朝を過ごした。

ソロー「WALDEN」

もし今、皆さんが孤独だと感じていてそれがつらいのであれば、それは自分と向き合っている証拠です。この先、どうせまたウルサイ世間と対峙しなければいけません。よい機会なのでじっくり孤独を味わってみてください。

わたしも今現在、そんな時期です。

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