ドラクエ6の世界はモヤっとしていて曖昧でわかりづらいものです。何度かプレイをして人々の話をよく聞き、それでもその全貌をはっきりと理解するのは難しい、そう私は感じています。
このページでは事象ごとに切り取って、ドラクエ6の複雑な世界の構造を考えてみたいと思います。
夢の世界と現実世界
まずざっくりと大枠を理解しておく必要があります。ドラクエ6の世界には夢の世界と現実の世界が存在します。
わたしたちは現実世界の様々な人たちの夢があつまって生まれました。
そうした人々の夢をたばね夢の世界をおさめるのが、わたしたちの国王、ゼニスさま。
ゼニスの城の住人
ということで、主人公や主要キャラたちの夢だけではなくて人類総体の夢が具現化したものが夢の世界、と考えることができます。
この「夢」という言葉の定義ですが、願望としてみる夢、眠っているときに見る夢、そして記憶や魂をも含まれる、とても広いもののようです。
もし単純に人々の願望、こうであったらいいなという「夢」だけであったらもう少しこの世界は理解しやすかったのかもしれません。この夢の定義の広さが、この物語を不可解なものにしていると私は思っています。
夢=願望のケース
先ほどの「夢」が単純に人々の願望や希望を表しているケースは、作中で多く発見することができます。その例をいくつかご紹介します。
ライフコッドの武器防具屋に展示されているよろいは現実世界ではボロボロで、店主はいつか磨き上げたいという願望を持っています。
一方、夢の世界のこのよろいはピカピカの立派なよろいになっており、「せいれいのよろい」と名前が付けられ7000Gで販売されています。
ライフコッドのわかりやすい事例をもう一つ挙げてみます。
主人公がマーケットに売りに行く民芸品を作っている工房は夢の世界では若い女性が働いているのがわかります。一方現実世界では職人夫婦は年老いており早く跡継ぎを育てなくてはいけないと話しているのです。(これは村長の娘ジュディと思われます)
この二つの事例は、人々の願いが実現したのが夢の世界パターンですね。ついでにターニアと主人公の関係も考えてみましょう。
現実世界では主人公はレイドックの王子でありターニアの兄ではありません。現実のターニアは両親を亡くした後、一人で生活をしていて家族のような存在を求めていました。
そんな中、行き倒れになっていた主人公を助け一緒に暮らすようになり、いつしか主人公が本当の兄だったらいいのにな、という願望を抱くようになったんですね。だから夢の世界では主人公がターニアの実の兄として描かれるようになるわけです。
願望がぶつかるケース
一方、ライフコッドの住人でターニアに想いを寄せるランドのケースですが、夢の世界でもターニアと結婚できていません。
ここから推察されることは、夢の世界は個人個人がそれぞれに見ているものではなくて人類の夢が集まってできている世界なので、利害が一致しない事案に関しては夢の世界であっても実現していない、ということです。
ランドには申し訳ないが、ターニアにはまったくその気がないということの現れです。
ここでひとつ理解しておかなければいけないのは、人々の夢は流動的であり、その時々で変化していくものであること。そしてそれを刻一刻と反映し続けるのが夢の世界なんです。
もしターニアが現実世界で主人公と会っていなければ、「この人が本当の兄だったらいいのに」という願望も起きません。主人公と暮らし始め、そういう願望を持った瞬間に夢の世界に主人公はターニアの兄として発生した、と考えることができます。
そして、ほかの村人やランドにとっても主人公がターニアの実の兄であったほうが都合がよかったので、それぞれの利害が衝突せずに夢の世界で主人公はターニアの実の兄として存在できた、のかもしれません。もちろん、主人公も幼い妹を亡くしていたので、心の奥底で妹が欲しいという願望を持っていたはずですから。
ここまでをまとめるとこんな感じです。
- 夢の世界は人々の願望が形作っている
- 利害が衝突する場合は調整される
ライフコッド襲撃事件
ライフコッド襲撃イベントを機に主人公は一人になるわけですが、その後の夢の世界のターニアにも変化が生じます。
だって私ひとりでいることになれて…
え?あれ?どうしてなれてるんだろ?
私ってなんか変。ごめんね。
夢の世界のターニアのことば
現実世界で主人公がいなくなったことを機に、夢の世界のターニアにも変化が起こっています。もちろん夢の世界では実の兄妹なので「ひとりでいることになれてる」というのはちょっとおかしいのですが、これも現実世界での主人公との関係を反映したものと見て取れます。
そして襲撃イベント後、夢の世界のランドはこんなこと言い出します。
ところで○○、あんた本当にターニアちゃんのアニキなのか…。
あ、いや、なんでもないんだ。ただちょっとそんなことが頭にうかんだもんだから…。
夢の世界のランドのことば
この後にも触れますが、夢の世界の住人は現実世界の記憶を断片的に有している、と考えて良さそうです。
寝ているときに見る夢
ここまでは現実世界の人々の願望が夢の世界を形作っている、ということを書いてきましたが、夢の世界の住人も現実世界を認識していることを示す具体例を挙げていきます。
夢の世界の酒場で飲んでいるじいさんはライフコッドが魔物に襲われる夢(就寝時)を見ています。そして夢の世界の農夫も、村が火事になる夢(就寝時)を見ています。
夢の世界の住人が就寝時に見る夢=現実の世界、というなんだかわけのわからないことになっていますが、夢の世界の住人にとってはそこは紛れもなく現実世界であり、そこで見る夢はパラレルワールドを表している、のかもしれません。
極めつけはターニアのこのセリフです。
私最近へんな夢を見るの。
この家でおにいちゃんと暮らしてはいるんだけど、夢の中では兄妹じゃなくて…
おにいちゃんは本当はどこかの国の王子さまなの。
夢の世界のターニアのことば
この言葉はそのまんま現実世界の二人の関係を表しているので、夢の世界の住人が見る夢は現実世界の出来事である、ということは間違いなさそうです。
この言葉をターニアが言うのは、主人公がラーの鏡を探索するタイミングと比較的序盤であり、現実世界で主人公が合体するかなり前のことだと考えると、時間軸を超越したものであることもわかってきます。
